武田薬品工業は、連結子会社である武田コンシューマーヘルスケア(TCHC)の全株式を米投資ファンドのブラックストーングループが運営するプライベート・エクイティ・ファンドが管理する買収目的会社Oscar A-Coに譲渡することを明らかにした。株式譲渡価額は、企業価値2420億円に、TCHCおよびTCHCの完全子会社である武田ヘルスケア(THP)の純有利子負債や運転資本等に係る調整を行い、実際の譲渡価額を確定する。株式譲渡実行日は2021年3月31日を予定。

今回の株式譲渡により、武田薬品工業は約1400億円の株式売却益(税引前)の発生を見込む。これによる、親会社の所有者に帰属する当期利益に対する増益影響は約1050億円の見込み。2020年度通期の業績予想は、今回の売却の影響額等を精査し、適宜見直していく。

TCHCは、日本初のビタミンB1製剤であるアリナミンや総合感冒薬であるベンザをはじめとした製品を通じて人々の健康に貢献し、特に同社のトップ製品でもあるアリナミンは、お客様の信頼を獲得して強力なブランドを築き、武田薬品工業の歴史においても重要な役割を果たしてきた。2017年には、日本国内を中心とするコンシューマーヘルスケア事業のさらなる成長を目指し、同事業を分社化させてTCHC社を設立。しかし、コンシューマーヘルスケア市場における競争が近年ますます激化し、お客のニーズも一層多様化する中、TCHCは、戦略を一段と強化し、さらに機動的なビジネスモデルを構築することで市場への即応性を高めていくことが必要となってきている。

一方で武田薬品工業は、現在、消化器系疾患、希少疾患、血漿分画製剤、オンコロジー(がん)、ニューロサイエンス(神経精神疾患)の主要な五つのビジネスエリアにフォーカスするとともに、サイエンスにより生活を一変させる革新的な医薬品の創出に注力する戦略を取っている。そのような中、TCHCの高い能力や専門性を最大化し、製品ブランドをさらに発展させるあらゆる成長戦略の選択肢を慎重に検討した結果、世界有数の投資会社でヘルスケア分野への豊富な投資実績を有するブラックストーンが設立した譲受会社に、武田薬品工業の保有するTCHCの全株式を譲渡することを決定。ブラックストーンの積極的かつ戦略的な投資のもと、独立した企業グループとして迅速かつ柔軟な意思決定を行うことで、TCHCが市場ニーズに即応し、製品ブランドをより一層成長させ、さらに発展していくものと当社は確信しています。ブラックストーンは、現在のTCHCの経営陣とともにTCHCの事業を成長させ、従業員の雇用を継続する意向だ。

なお、今回の売却に関し、武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長は、コメントを発表している。

詳細については「国際商業」2020年11月号(2020年10月7日発売)に掲載する。