第一三共ヘルスケアは、人が感じる肌の透明感について客観的に評価する方法を開発し、日本色彩学会第51回全国大会(2020年6月27日~7月5日)において発表。科学的根拠に基づく評価方法の確立を目指す。

近年、女性のスキンケアへの意識は多様化しており、透明感のある肌は理想の肌質の一つといわれている。透明感のある肌は、「皮膚がくもりなく透き通ったように見える状態」(日本化粧品工業連合会)と定義されているが、共通した測定方法や評価基準は明確にされていないのが現状。さまざまな研究がなされているものの、どの要素が最も人の感覚に紐付いているかについては一概に表現できず、依然として官能評価などの主観的な評価が主となっている。

そこで、「一般女性が感じる透明感のある肌」という点に重きを置き、肌の画像解析を用いて、透明感の官能評価との関係性を解析することで、客観的に評価できる評価手法の構築を試みた。

具体的な方法では、目視による評価を行う際、顔全体から得るさまざまな情報を排除し、評価対象の肌のみに着目できるよう、顔全体から一部分のみを切り取った肌画像を用いて検討。はじめに、照明条件ならびに被写体との距離を同一にし、20~50代のモデルの洗顔後の正面顔写真を撮影し、次に写真の両頬部分より所定のサイズを切り取った肌画像を作成した。

目視による肌透明感評価では、20~50代の一般評価者の女性80 名により、全ての肌画像に対して透明感の目視評価スコアを付与。評価方法としては、二つの肌画像を比べて一方の肌画像の透明感がどの程度かを評価する「一対比較法」を用い、評価者は肌画像の「透明感」について7 段階(+3:かなり感じる~-3:かなり感じない)で評価した。

皮膚色・色ムラの測定においては、肌画像を用い、画像処理用ソフトウェア(Adobe 社製Photoshop ver.19.1.7)にてsRGB 値(*1)の輝度とそのSDを取得。次に、L*a*b*値に変換し、画像中のLab平均値ならびにSD を取得した。

*1 sRGB 値:国際電気標準会議(IEC)が定めた国際標準規格の色空間

これらの評価の結果および考察では、肌透明感における輝度の影響として肌画像から得られた皮膚色・色ムラの数値(L*値・a*値・b*値・輝度の平均値およびSD)と透明感の目視評価スコアの個々の相関性を解析すると、輝度の平均値と目視評価スコアに極めて高い相関性が確認された(図1)。

輝度と透明感の関係性については、既に報告がなされている通り(*2)、肌の平均輝度が高いほど肌の透明感は高く知覚されることを示しており、一般女性の評価においても、輝度は透明感と高い相関性があることが示された。

*2 西牟田 大, 五十嵐 崇訓, 岡嶋 克典, 映像メディア学会誌, 68, J543-J545 (2014)

重回帰分析による評価式の構築に関しては、肌画像から得られた色情報を透明感に対して重回帰分析し、「輝度(平均値)」と「b*値(SD)」を説明変数として抽出。その結果、目視による透明感スコアを極めて高い精度で再現できる計算式を構築することができた(図2)。

以上の結果から、本研究では、輝度が高いこと、さらにb*値のSD が小さいことが、人が感じる肌の透明感に大きな影響を与えているとの結論に至った。b*値のSD は、色ムラと解釈できることから、人が感じる「透明感のある肌」とは、輝度が高く、色ムラが小さい肌であることと結論付けることができた。

構築した手法を用いることで、今までは主観的にしか評価できなかった「透明感」を客観的な数値に当てはめて評価することができるようになったため、今後はこれらの因子に着目することにより、人が感じる透明感が向上することを目指したスキンケア製品の開発につなげていく。