トライアルホールディングス(HD)が立ち上げたリテールAI研究会が6月12日、同研究会の事例発表会を東京国際フォーラムで開催した。冒頭の挨拶でトライアルHDの永田久男会長は、「リテールAI研究会は小売りやメーカー、卸などの1社だけの狭い話ではなく、開かれた状態でエコシステム(関連する事業体を巻き込む)に多くの企業が自由に参加して話し合う場です。研究会を通じ、リテール業界でエコシステムやオープンイノベーションを実践したい」と述べた。

リテールAI研究会はリテールAIを使った店頭実験の情報を共有化し、リテールAIの活用と人材育成を推進するもの。食品や日用品ごとに分科会を設け、ECにはないリアル店頭の強みを打ち出す。2017年に立ち上げ、18年8月には流通部会を発足。メーカーと卸などで構成される正会員68社と賛助会員102社に加え、小売業で構成される流通会員も26社まで増えている。

メーカーと卸に加え小売業の会員も増加

 

 

 

 

 

 

基調講演では同研究会の設立に携わった筑波大学の立本博文教授が講演。コンピューター産業で起きたDX(デジタルトランスフォーメーション)で産業構造が変化した例を挙げ、リテール業界でもデータ資源と新技術活用によって加速しているエコシステム型産業構造への対応の重要性を説いた。その1例としてリテール研究会の取り組みを紹介。汎用性が高いIoTデバイスとビックデータで情報を蓄積し、機械学習で売り場を予測。店内ではAIカメラで棚割情報を獲得し、デジタルサイネージと顧客ごとのID‐POSの3つのデータを連動する取り組みを解説した。

研究会の設立に携わった筑波大学の立本博文教授が講演

タブレットカート事例

 

 

 

 

 

 

 

続いてアマゾンウェブサービスジャパンの安田俊彦統括本部長が講演。次に、ウォルマートジャパンの白石拓也バイス・プレジデントCIOがウォルマートの進めるDXを講演した。米国でレジのない店舗「サムズクラブ・ナウ」では、レジの従業員を減らすかわりに、店内の各売り場に試食コーナーなどを設けて店内に従業員を配置して活気を生み出す事例などを紹介。西友でもデータ情報やテクノロジーを活用し、利益と売り上げ拡大を目指すと白石氏は述べた。

ウォルマートジャパンの白石拓也バイス・プレジデントCIO

アマゾンウェブサービスジャパンの安田俊彦統括本部長

 

 

 

 

 

 

 

アマゾンの事例

ウォルマートの事例

 

 

 

 

 

 

 

パネルディスカッションでは、「リアルとネットはどうなっていくのか」をテーマに、トライアルHDの西川晋二取締役副会長とサントリー酒類の中村直人氏、立本教授、同研究会代表理事の田中雄策氏の4名が登壇。AIカメラを使った消費者行動特性の把握や棚割提案などの事例について討論した。最後に同研究会会員であるユニ・チャーム、伊藤忠食品、ローソンのほか、トレタ(外食のPOSデータ活用)の技術を使ったキリンビールとロッテの取り組み事例をそれぞれが発表した。

「リアルとネットはどうなっていくのか」をテーマにトライアルHDの西川晋二取締役副会長が討論した

ユニ・チャームの発表