熊本の地震後も、お客が離れなかった化粧品専門店がある。店に通い、顔なじみの店員と話す。それが日常の一部だった。化粧品を買うだけが目的ではない。美を媒介に、人と人がつながっている。災害を経ても続くその日常に、専門店の底力を感じた。
先日、ある研究者がAI for Scienceの進化に焦りを覚えると話していた。発想が平凡な研究者は、数年以内に存在意義を問われかねないという。化粧品研究も変革期だ。世界の化粧品研究者が集う国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)の学術大会では、今年、中国のPROYAが口頭発表・基礎研究部門の最優秀賞を獲得した。
AIが進化するほど、人間には何が求められるのか。化粧は自分のために楽しむものだが、誰かと会うための身だしなみでもある。会いたい人がいる。話したい人がいる。その思いが店に通う日常を支えているのだろう。研究も同じだ。異なる経験や専門性を持つ人と語り合い、一人では思いつかない問いが生まれる。国際学会も成果を競うだけでなく、人が刺激し合う場だ。被災地の店先と世界の研究者。二つの世界が重なった。
次号では、IFSCC2026の最優秀賞を受賞したすべての企業・大学を取材する。中国やフランスの研究者とも距離を超えて話せるのは、デジタル技術のおかげだ。技術が人をつなぎ、その対話が新しい発想を生む。研究成果の背景にある出会いや議論にも迫りたい。今から楽しみである。★
『国際商業』2026年12月号掲載





















