ロート製薬は、お客一人一人のウェルビーイングに寄り添い、機能だけでなく、毎日使いたくなる心地よさまで含めて製品価値を磨く研究を進めている。
今回、極潤ヒアルロン液(ハダラボモイスト化粧水d)の使用時に生まれる「好ましさ」について、お客が実際に感じる使い心地の変化に着目し、生理指標(脳波や心拍など、身体の反応を客観的に測定する指標。感情や集中状態、快・不快などの推定に用いられる)と塗布中の感触表現の関係を解析した。その結果、塗布時間全体の平均では大きな差が見られない一方、使い心地の変化を感じる中盤で生理指標について群の違いが表れ、また、好ましく感じた群では「しっとり」「もちもち」、そうでない群では「ヌルヌル」と、使い心地に異なる表現が見られた。塗布中盤の感触の受け止め方が、スキンケアの好ましさの分かれ目となる可能性が示された。
同研究は、これまで言葉だけでは捉えにくかった「なぜ好きと感じるのか」を、時間とともに変化する使用感という観点から読み解くものだ。今後は、お客の潜在的な好みに寄り添った製剤設計や製品開発への応用を目指す。
同研究成果は、3月16~18日に宇都宮にて開催した第21回日本感性工学会春季大会にて発表を行った。
スキンケア製品においては、成分や機能性による製品差がお客にとって分かりにくくなる中、SNSなどを通じた情報発信が購買に与える影響が高まっている。その一方で、継続使用の可否は、使用時の感性、特に塗布中に感じる心地よさに大きく影響されると考えられる。しかし、従来の使用感評価はアンケートなどの主観的手法が中心であり、塗布中に生じる潜在的な感性や「なぜ好きと感じるのか」といった理由までは十分に捉えられていなかった。
同社ではこれまで、生理指標を用いた感性評価(製品使用時に人が感じる印象や心地よさなどの主観的感覚を評価すること)により「好ましさ」による反応の違いを明らかにしてきたが、その違いが、塗布中のどの場面で生じ、どのような使い心地と結びついているのか、その表現型までは明らかではなかった。そこで同研究では、塗布中の使い心地の変化に着目し、生理指標を組み合わせて解析することで、感性の違いの詳細な解明を目指した。
研究の結果、二つの結果が得られた。
(1)「好きかどうか」と塗布中の生理指標の関係を確認
極潤ヒアルロン液の使用時において、事前に「好み」に基づき分類した群間で、塗布時間全体の生理指標に違いは見られなかった。(図1)
(2)塗布中の使い心地の変化が「好き」の分岐点
塗布時間を感触の変化(図2)に合わせて分割した結果、前期では差が見られない一方で、使い心地に変化を感じる中期以降において、Positive群では副交感神経活動の指標となるHFnuが正の値に上昇し、快方向に移行する傾向が見られた(図3)。また、そのときに感じる使い心地について、Positive群では「しっとり」「もちもち」と表現されるのに対し、Not-Positive群では「ヌルヌル」「ネチャネチャ」と、異なる表現をされることが確認された。一方、肌の仕上がり感を感じる後期では、引き続きPositive群のHFnuは快方向、Not-Positive群は不快方向のままだったが、使い心地は両群ともに「もちもち」「しっとり」「ふっくら」といった同じ表現型となった。
同研究により、極潤ヒアルロン液の使い心地に対する「好き」という感性は、塗布中に感じる使い心地の変化によって形成される可能性が示唆された。その使い心地の変化に対する潜在的な感性が、以降の使い心地に関する感性にも影響を与えていると考えられる。また、後期では生理指標が異なるにも関わらず、使い心地は同様の表現を示したことから、潜在的な感性はアンケートなどの主観評価だけでは評価しきれず、生理指標測定の必要性が改めて示された。今回、生理指標と使い心地の対応関係を明らかにしたことで、これまでブラックボックスであった感性構造の一部を理解できるようになった。これは従来の研究手法だけでは得られなかった新たな知見である。
同研究により、スキンケアの使い心地に対する「好き」という感性を、使い心地の変化と生理指標の関係から構造的に捉えることが可能となった。今後は、特に塗布過程における感触の時間変化に着目した評価を活用することで、お客の潜在的な好みに寄り添った製剤設計や製品開発への応用が期待される。さらに、製品開発に留まらず、お客とのコミュニケーションの活性化にも活用予定だ。今後も、肌への機能的価値に加え、使用時の心地よさなど感性への働きかけも含めた価値創出を通じて、よりお客の視点に立った製品開発を推進していく。






























