ロート製薬は、皮膚をヒト最大の臓器と捉え、「本来の美しさは健康の先にある」という考えに基づき、皮膚における炎症発症メカニズムについての研究を行っている。その一環として、皮脂と皮膚炎症の関係性についての研究を進めてきた。

同研究により、ヒト皮脂中の主要な遊離脂肪酸量と炎症性コメド数との間に、有意な正の相関があることを確認した。また、ヒト皮脂に含まれるステアリン酸が、ヒト表皮角化細胞において炎症因子であるIL-8(インターロイキン8、体内で炎症や刺激が起こった際に分泌される物質で、免疫細胞を呼び寄せる役割を持つ。皮膚では、炎症・赤み・肌トラブルと関連することが知られている)の遺伝子発現を上昇させることを見いだした。

さらに、ビタミンC(アスコルビン酸)とアゼライン酸の組み合わせにより、顕著にIL-8の遺伝子発現が抑制されることを明らかにした。同社は今後も肌の基礎研究を継続的に深化させることで、より高い実効性と実感価値をもたらすスキンケア研究を進めていくとしている。

皮脂は皮膚の保湿に寄与しているが、その構成要素の一つである遊離脂肪酸は、過剰に産生・分泌されると皮膚(毛穴を含む)における炎症と関連することが報告されている。一方で、皮脂中には多様な遊離脂肪酸が存在するため、炎症と関連する遊離脂肪酸については、十分に明らかになってはいなかった。

そこで同研究では、①ヒト皮脂中の遊離脂肪酸量と炎症性コメド数との関連性、②遊離脂肪酸がヒト表皮角化細胞において引き起こす炎症反応(IL-8遺伝子発現)ならびに、③この反応に対するビタミンCとアゼライン酸組み合わせによる抑制効果について検討した。

研究により、三つの結果が得られた。

結果1:ヒト皮脂中の主要な遊離脂肪酸量と炎症性コメド数が正に相関することを確認

炎症性コメドとヒト皮脂由来の遊離脂肪酸との関連性を明らかにするため、日本人女性50名を対象に顔の炎症性コメドの計測および遊離脂肪酸の分析を行った。その結果、主要な遊離脂肪酸であるミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の総量が炎症性コメド数と有意に正に相関することが確認された。

<試験方法>
日本人女性50名を対象に、額部皮膚から皮脂を採取し、ガスクロマトグラフ質量分析計により遊離脂肪酸量を測定した。炎症性コメド数は、日本皮膚科学会認定皮膚科専門医が評価を実施。各遊離脂肪酸量と炎症性コメド数との相関をSpearmanの順位相関係数で解析した。(外部試験機関にて実施)

図1:主要な遊離脂肪酸(ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸)の総量と炎症性コメド数の相関

結果2:ヒト皮脂に含まれるステアリン酸はヒト表皮角化細胞においてIL-8の遺伝子発現を上昇させた

結果1で相関が示されたことから、次にミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が皮膚細胞に及ぼす影響について検討した。ヒト表皮角化細胞にこれらの遊離脂肪酸を添加し、炎症因子であるIL-8の遺伝子発現を評価した。その結果、ステアリン酸が顕著にIL-8の遺伝子発現を上昇させることが明らかとなった。

<試験方法>
ヒト表皮角化細胞にミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸を同濃度添加後、IL-8の遺伝子発現をリアルタイムPCR法にて確認した。(n=3; mean±SD, Dunnett’s test. *p<0.05, ***p<0.001)(ロート製薬研究所で実施)

図2:ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸によるIL-8遺伝子発現への影響

結果3:ビタミンCとアゼライン酸の組み合わせはビタミンC単独と比較してステアリン酸によって誘導されるIL-8の遺伝子発現を抑制した

結果2でIL-8の遺伝子発現が高かったステアリン酸をモデル遊離脂肪酸として、ステアリン酸によって誘導されるIL-8の遺伝子発現に対するビタミンCおよびアゼライン酸の効果を評価した。その結果、ビタミンCとアゼライン酸の組み合わせは、ビタミンC単独と比較してステアリン酸によって誘導されるIL-8の遺伝子発現を有意に抑制することが確認された。

<試験方法>
ヒト表皮角化細胞にステアリン酸単独またはステアリン酸とビタミンC、ステアリン酸とビタミンC・アゼライン酸を同時添加後、IL-8の遺伝子発現をリアルタイムPCR法にて確認した。(n=3; mean±SD, Tukey-Kramer test. **p<0.01, ***p<0.001)(ロート製薬研究所で実施)

図3:ビタミンC・アゼライン酸によるステアリン酸誘導IL-8の遺伝子発現抑制効果