ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業は、中京大学スポーツ科学部の松本孝朗教授らの研究チームと共同で、可視光画像から得られた運動時の人の顔色と直腸温（深部体温、身体の中心部の温度であり、専用の機器を用いて測定を行う）の関連を新たに明らかにした。
同研究成果は、2025年11月29～30日に開催された第12回日本スポーツ理学療法学会学術大会で「男性大学生を対象としたエルゴメーター運動時の深部体温と顔色情報の関連」の演題名で発表した。
猛暑による人体や日常生活への影響は深刻な社会課題となっており、深部体温の把握は重要と言われている。ポーラ化成工業では、解決に向けた取り組みの一つとして、暑熱環境における労働や運動時の深部体温変化について研究を行っている。深部体温を正確に把握することは難しく、かつ労働現場などで簡便に測定することも容易ではない。
そこで同社では、簡便な測定方法として「顔に現れる情報の変化」から深部体温の上昇を捉える技術開発を幅広く検討している。今回、一眼レフカメラにて撮影した一般的な顔画像をもとに深部体温の上昇を捉える可能性について研究を行った。
深部体温の上昇と顔色の関係を調べるため、運動習慣のある中京大学の男子学生15名に自転車運動をしてもらい、その間、一定間隔で一眼レフカメラを用いて顔を撮影した。深部体温の上昇と、顔の各部位の色の変化の相関解析を行った。深部体温が上昇する間の顔色の変化を追跡すると（図1）、顔の複数の部位で、深部体温の上昇と顔の色変化に関係性があることが分かった。また、変化する色の方向性も、部位によって異なることが分かった。特に前額部は、他の部位よりも大きく色が変化することが分かった（表1、図2、図3）。
これら結果より、モニタリングに使用する顔部位を適切に選択して色の変化を追うことで、深部体温の上昇を捉えられる可能性が見えてきた。同成果は、暑熱環境における労働や運動時の体の変化にいち早く気づきを与える仕組みの開発に役立つと考えている。同社では、こうした基礎知見を活用することで、顔の色変化から深部体温の上昇を検出できる技術の開発につなげたい考えだ。
