ファイントゥデイは、AI(人工知能)・AR(拡張現実)技術を用いたシミュレーションツールによる顔印象の評価手法を新開発し、男性が理想の顔印象を表現するための新たな知見を確認した。
今回の研究成果は、2025年9月17~19日に東京都で開催された第27回日本感性工学会および25年11月1~2日に東京都で開催の第30回日本顔学会にて発表した。
SNSやオンライン会議の普及に伴い、自分の顔を画面越しに見る機会が増えたことで男性の美容への関心が高まり、男性化粧品市場は年々拡大を続けている。若い世代を中心に「自分らしさ」を重視する価値観が広がり、男性の自己表現のあり方も多様化している。
一方で、女性よりもメイクアップなどの美容経験が少ない男性にとって、無数の情報や製品から最適な美容アイテムを選択することの難しさや、「過剰な仕上がりを避けたい」という心理的な抵抗感が、新たな美容行動に踏み出す際の障壁となっている。また、印象研究の分野では、心理評価などを通じて生活者の理想を把握する試みは行われてきたが、生活者自身が言語化できないイメージを明らかにすることは困難だった。
そこで同社は、パーフェクト株式会社のAI・AR技術を用いて独自開発したシミュレーションツールにより、顔のパーツを即時的かつ自由に変化させて印象を評価する手法を新たに開発し、男性が求める顔印象とそれを実現する顔の変容アプローチを研究した。
一般の日本人男性を対象に、シミュレーションツールを用いて以下の実験を行った。
【実験①】自己顔における「理想の顔」と「かっこいい顔」の検討
被験者:20~49歳日本人男性63名
内容:被験者が自分の顔を撮影し、シミュレーションツールで「目」「瞳」「鼻」「口」「眉」を自由に調整することで、自己顔における「理想の顔」と「かっこいい顔」を作成した。
結果:目の角度に有意差が認められ、「かっこいい顔」は「理想の顔」と比較して、目尻を上げる傾向が見られた(表1)。また、「理想の顔」では、被験者が選択した目の角度の分布に単一のピークが見られたのに対し、「かっこいい顔」では広範囲に分布した(図1)。分布の集中は、被験者間に共通した理想の自己像が存在すること、分布の分散は、社会的な魅力が多様化していることを示唆する。


図1:目の角度の分布
【実験②】自己顔と他者顔における「かっこいい顔」への変容アプローチの検討
被験者:
・自己編集群20~49歳日本人男性63名
・他者編集群22~49歳日本人男性31人
内容:一般の日本人男性を、自分の顔を調整する「自己編集群」と他者の顔を調整する「他者編集群」に分け、自己編集群は、シミュレーションツールを用いて自分の顔写真の「目」「瞳」「鼻」「口」「眉」を自由に調整することで「かっこいい自己顔」を作成。他者編集群は、自己編集群で撮影したオリジナル画像からランダムに抽出された5名分の顔写真に対して同様の変更を行い、「かっこいい他者顔」を作成した(図2)。
結果:自己編集群と他者編集群で、目の大きさ、眼間距離、鼻筋の幅に有意差が確認された(表2)。自己編集群は、目を大きく鼻筋を細くすることで、爽やかさや親しみやすさを強調したのに対し、他者編集群は、眼間を強く詰めて彫りと威厳を際立たせ、力強さや男らしさを強調した。


図2:自己編集顔と他者編集顔に対する変容特徴を反映し、AIで生成した男性顔をシミュレーションツールで特徴的に変化させたイメージ画像
以上の研究から、男性が思い描く「理想の自己顔」と「かっこいい自己顔」には差異があること、さらに、顔の編集対象が自己か他者かによって「かっこいい顔」へのアプローチが異なることが明らかになった。これらの知見により、自己と他者、双方の視点を踏まえた研究が、理想の顔印象をかなえるソリューション開発に有用であると考えられる。























