コーセーは、テイカとの共同研究により、高いカバー力と自然な仕上がりを両立できるコンシーラー素材「IOLTD」(Iron Oxide mixed with Large Titanium Dioxide)を開発した。これは、コンシーラーのカバー力の要である酸化チタンと酸化鉄の複合粉体であり、特に濃い肌色の人により自然でカバー力のある品質を提供できる。同研究成果の一部は2025年9月15~18日にフランス・カンヌで開催の第35回IFSCC学術大会にて発表した。

図1:「IOLTD」配合コンシーラーによる仕上がり効果 図2:開発したコンシーラー素材「IOLTD」の一例
ファンデーションやコンシーラーは、肌の気になる部分をカバーし、自然な美しさを引き立てるために広く使われている。これらの製品は通常、酸化チタンと酸化鉄を配合することでカバー力を実現している。しかし、従来の技術では、濃い肌色の人向けにカバー力と自然な仕上がりが両立しづらいという課題があった。酸化チタンは白い粉体で、光を反射・散乱させることで高いカバー力を発揮するが、濃い肌色の人が使用すると肌から浮いたような不自然な白さ(白浮き)が生じ、自然な仕上がりを損なってしまう。一方、酸化鉄は複数の種類を組み合わせることで肌の色に合わせた調色が可能だが、粒子が凝集しやすいため製品中での分散が不十分となり、カバー力が低下することがあった。そこで同研究では、濃い肌色の人でもカバー力と自然な仕上がりを実現できるコンシーラー素材の開発に取り組んだ。
上記の課題を解決するために注目したのは、酸化チタンの粒子サイズだ。ファンデーションやコンシーラーで一般的に使われている酸化チタンは粒子サイズが200〜300 nm(1nmは100万分の1mm)程度であり、可視光の反射特性に優れている。これが濃い肌色の人にとっては不自然な白浮きにつながるため、400〜1,000 nmの大きな酸化チタンを活用することを考えた。これを酸化鉄と共に強く混合したところ、酸化鉄の凝集を大幅に抑制できることが分かった。これは大サイズの酸化チタンと酸化鉄の混合時に起こる衝突により酸化鉄が均一に分散するためと考えられ、これにより光の吸収率が向上し、濃い肌色でもカバーできる発色を得ることが期待できる。こうして、大サイズの酸化チタンと酸化鉄の複合粉体「IOLTD」をコンシーラー用の素材として開発した(図2)。
開発した「IOLTD」を配合したコンシーラーを作製し、その濃い肌色領域でのカバー力と仕上がりを評価した。カバー力の比較には、製法のみが異なる従来製法品、および従来のサイズの酸化チタンを用いた従来品を用いた。その結果、「IOLTD」配合コンシーラーは、どちらよりも濃い肌色領域でのカバー力が高いことが確認できた(図3)。

図3:「IOLTD」配合コンシーラーのカバー力評価
また、実際に濃い肌色の人に使用してもらったところ、白浮きのない自然な仕上がりとなることを確認した(図1)。今回用いた大サイズの酸化チタンには、白浮きの原因となる青い光の反射を抑えつつ、自然に見せる赤い光の反射を高める特性があるため、より自然な仕上がりが実現できたと考える。
開発した「IOLTD」は酸化チタンや酸化鉄などの組成を調整することで、濃い肌色だけでなく、あらゆる肌色にも適用できる拡張性がある。今後、コンシーラーやファンデーションなどへの応用を進めていく。同社はこれからも、国籍・性別・年齢を問わず、全ての人が自分らしい美しさを表現できるような製品開発や価値提案を推進していくとしている。