日本メナード化粧品はこれまで、魅力的な唇に関連する要素とそれに関わる生体因子の解明に取り組んできた。今回の研究では、唇の魅力の感じ方に「うるおい」「色み」「ボリューム」「シワ」の四つの要素がどう影響を与えるかを解析し、男女で重視する要素が異なることが分かった。さらに、「うるおい」に影響を与える生体因子を調べたところ、唇表面のpHが低いほどうるおいが高いことが明らかになった。唇の魅力を左右する要素やそれに関わる生体因子を把握することで、より適切なリップケアが可能になると考えられる。
これまでメナードでは、魅力的に見える唇の要素とそれに関連する生体因子について研究を進めてきた。今回は魅力的に感じる唇の要素として重要な「色み」「ボリューム」「シワ」「うるおい」の4項目に着目し、男女で唇の魅力の感じ方にどのような違いが見られるか解析した。その結果、男性は「色み」と「うるおい」、女性は「色み」と「うるおい」に加えて「ボリューム」を重視しており、男女差があることが分かった。
また、これらの要素に影響を及ぼす生体因子について、先行研究では「色み」に血流量と血中酸素飽和度、「ボリューム」に真皮の構造、「シワ」に表面温度が関与することを見いだしている。今回は新たに「うるおい」に関連する生体因子を調査し、表面pHが低いほどうるおった状態であることを明らかにした。
唇のうるおいは魅力的に見せる要素の一つだが、唇の乾燥に悩む人は多いため、うるおいを高めるケアは非常に重要だ。今回の結果は、魅力的な唇を目指す商品の開発や美容の提案に活用できると同社は考えている。今後、この研究成果をもとに、個人の魅力を引き出す新しいリップケアの提案につなげていくとしている。
なお、同研究の成果は、日本感性工学会論文誌第24巻2号(2025)に掲載された。
これまでのアンケート調査の結果(図1)から、理想の唇について、「うるおっている」「色がきれい」「ふっくらしている」「シワが目立たない」の四つの要素が特に重要であると考えられた。この結果を参考に、魅力的に感じる唇の外見の要素として「うるおい」「色み」「ボリューム」「シワ」の四つに着目した。
アンケート調査の調査期間は2023年9月22日~10月9日。調査は自社で行い、調査対象は10~80代日本人女性。有効回答数は1463名で、Webアンケートにて調査を行った。

図1:唇の魅力度に関わるアンケート
さらに、「うるおい」「色み」「ボリューム」「シワ」が唇の魅力にどの程度関与しているのかを調べるため、関連解析を実施した。まず、20~50代の女性(各年代5名ずつ、計20名)の唇画像20枚を用意し、55名の男性および30名の女性評価者により、唇の魅力度を順位付けする評価を行った。さらに、同じ20枚の唇画像について、5名の皮膚科学研究従事者が「うるおい」の程度、「色み」の美しさ、「ボリューム」の程度、「シワ」の程度を評価した。これらの評価結果をもとに重回帰分析を行い、「うるおい」「色み」「ボリューム」「シワ」が唇の魅力度に与える影響を検討した。
その結果、男性評価者では唇の魅力度に対して「色み」の関与が最も大きく、「うるおい」も関与が認められた。一方、女性評価者では、男性と同様に「色み」と「うるおい」が関与しているだけでなく、「ボリューム」も魅力度に影響を与えていることが明らかになった。つまり、唇の魅力を判断する際、男性は「色み」と「うるおい」を重視し、女性は「色み」、「うるおい」に加えて「ボリューム」も重視していることが示された(図2)。

図2:唇の魅力に影響を与える外見の要素
メナードはこれまでの研究から、唇の「色み」「ボリューム」「シワ」に関与する生体因子を解析し、「色み」には血流量や血中酸素飽和度、「ボリューム」には真皮の乳頭構造、「シワ」には表面温度が関与することを明らかにしてきた。今回新たに、「うるおい」に関与する生体因子を調査した。
唇のうるおいの指標として、うるおいと関連があるとされる角質細胞の重層剥離の状態を評価した。角質細胞はテープストリップ法により採取し、4名の皮膚科学研究従事者が重層剥離スコアを算出した(スコアが高いほど重層剥離が少なく、唇の状態が良好)。重層剥離スコアと様々な生体因子との関連を解析した結果、表面pHが低いほど重層剥離スコアが高く、うるおいがあることが分かった(図3)。このことから、唇の「うるおい」には表面pHが関与していることが明らかになった。

図3:うるおい(重層剥離)と表面pHの関係