タカラベルモントの化粧品研究開発部は、毛髪内部にまで及んだダメージを自社独自のイメージング技術により可視化させることで、毛髪内部のコルテックス領域を効果的にケアできる成分を確認した。同研究成果は、2024年11月18~20日に兵庫県神戸市の神戸国際会議場で開催された「第2回日本化粧品技術者会 学術大会」にてポスター発表を行った。発表タイトルは、「ダメージ毛を内部から効果的に補修するケア方法を求めて~FS-SR101染色パターン変化を指標とした毛髪内部ケアの検討~」。
近年、ヘアスタイルの多様化により多くの人が毛髪の内部に及ぶダメージを抱えている。このような毛髪内部のダメージによる状態変化を改善・可視化すべく、同研究ではFS-SR101染色を用いた。健康毛ではこの染色によって毛髪内部を緑(FS)と赤色(SR)で染め分けることができるが、ダメージ毛ではそれらの蛍光が減弱、消失してしまう。今回、ダメージ毛を一般的なトリートメントで処理し染色してみたところ、消失した蛍光は回復しないことが明らかとなった。このことから同社は、一般的なトリートメントの使用ではコルテックス領域の状態改善には至っていないと考え、効果的なケア方法の確立を目指した。
100を超えるトリートメント成分およびその組み合わせで毛髪を処理した結果、今回の研究ではダメージ毛のコルテックス領域への反応性が高い組成物を発見することができた。また、MALDI法による質量分析イメージングを行うことで、ケア成分が効果的にコルテックス領域に吸着していることを確認した。以下、染色パターンの変化を三つ示す。
1.毛髪切片(輪切りにした状態)を各組成物で直接処理した場合の染色パターン変化
様々なヘアケア成分やその組み合わせを毛髪切片に対して直接処理し、FS-SR101染色パターン変化を確認した。飽和アルキル鎖をもつカチオン性界面活性剤と尿素を含む組成物(組成物A)で処理した場合、スルホローダミン101(SR)を示す赤は増強したが、フルオレセインナトリウム(FS)を示す緑の増強は緩やかだった。また不飽和アルキル鎖をもつカチオン性界面活性剤と尿素を含む組成物(組成物B)で処理した場合、組成物Aで処理した場合と同様にSRが増強し、さらにFSの増強もみられた(図1)。この結果より、毛髪切片への効果はカチオン性界面活性剤のアルキル鎖長もしくは二重結合の有無にあると考えた。

図1:毛髪切片を組成物AまたはBで直接処理した場合の染色パターン変化
2.アルキル鎖の炭素数と染色パターン変化
カチオン性界面活性剤のアルキル鎖長の違いによる効果を確認したところ、アルキル鎖長の違いによりFS-SR101染色パターンに差があることが確認された(図2)。この結果からカチオン性界面活性剤のアルキル鎖長はコルテックス領域への吸着性・反応性に寄与しており、特に鎖長が炭素数18(C18)の時に効果が高いと考えた。

図2:カチオン性界面活性剤のアルキル鎖長の違いによる染色の蛍光パターンの差
3.毛髪表面(毛髪そのままの状態)に対し、同様の処理をした場合の染色パターン変化
毛髪を切片化せずに毛髪表面に対し、組成物AまたはBに浸漬した場合の毛髪への影響についても調べた。結果、毛髪表面に処理をした場合でもFS-SR101染色パターンは変化することが分かった(図3)。同結果より、組成物A、Bは毛髪表面からの処理でもコルテックス領域へ影響を及ぼす効果があると期待できる。

図3:毛髪表面に処理をした際のFS-SR101染色パターンの変化
化粧品研究開発部第一研究所(現:化粧品研究開発部 第二研究所所属)の荒井佑香研究員は研究結果について、「今回の研究は、より多くの方にもっと自由な髪型・髪色を楽しんでほしいという思いをもちながら取り組みました。今後はこの研究をより深め、さらに効果が高いケア方法の発見や、その先にあるヘアケア業界の発展を目指します。また、将来的には今回の研究結果に基づいた製剤開発に取り組むことでヘアカラー・ヘアスタイルを楽しむみなさまの喜び・楽しさを、製品を通じてサポートしていきたいです」としている。

荒井研究員