ファンケル

マイクロRNAの一種に細胞老化抑制などの作用を確認

ファンケルは、シワやたるみの予防や改善を目的とし、それらのメカニズムの解明や美容成分の探索を進めている。その解明の要となる「細胞」に着目し、幹細胞の一種であり、主に脂肪組織に存在する脂肪由来間葉系幹細胞(ADSCs)から分泌されるエクソソーム(細胞から分泌される直径30〜150ナノメートルの細胞外小胞の一種。細胞間の情報伝達や体の機能維持に重要な役割を果たしている)に含まれる特定のマイクロRNA(miRNA)(遺伝子の発現を調節する役割を担うRNAの一種で、細胞間の情報伝達にも使用されている)が、皮膚の老化抑制に関与することを、同社で明らかにしている。今回、そのmiRNAの一種であるmiR-365aを高含有するヤギミルク由来エクソソームが、皮膚細胞の老化抑制およびコラーゲン・エラスチンの産生促進作用を持つことを確認した。同研究結果を生かし、エイジングケア化粧品の開発に応用していく。

なお、同研究は、東京医科大学との共同研究成果によるもので、2023年6月に東京都で開催された第23回日本抗加齢医学会総会で発表した。

得られた研究成果は以下の三つだ。

1.miRNAの一種であるmiR-365aに細胞の老化抑制作用を確認

ADSCs由来エクソソームに高含有していたmiRNAの一つmiR-365aが細胞の老化を抑制(Mutat Res.2015 Jul:777:69-78.)することが知られており、皮膚細胞への効果も期待されることから、miR-365aに着目した。老齢と若齢のそれぞれの線維芽細胞(真皮に存在し、コラーゲンやエラスチンなどを生み出す細胞)内にあるmiR-365a発現量を確認した結果、老齢細胞はmiR-365aが少なくなっていることを確認した()。そこで老齢細胞にmiR-365aを一時的に増やす目的で、遺伝子を導入したところ、老化した細胞が多いほど存在する老化マーカーが減少していることを確認した。この結果から、miR-365aを細胞内で増やすことで、細胞の老化を防ぐために有用であることが示唆された。

老若細胞によるmiR-365a発現の比較

2.ヤギミルク由来エクソソームは、老齢細胞内にmiR-365aを届けて増やすことを確認

抗老化作用が確認されたmiR-365aを、細胞の老化を改善する化粧品開発に応用できるよう、素材探索を行った。miR-365aはエクソソームに含まれていること、そのエクソソームは、細胞間の情報伝達に重要な役割を持ち、細胞に直接届くことで細胞の機能を調節することを踏まえ、エクソソームを活用した素材探索を検討した。エクソソームは、母乳などの乳に多く含まれている。中でもヤギのミルクはエクソソームを豊富に含有し、抗炎症作用を有することが報告されていることから(Res Vet Sci.2022 Dec 20:152:546-556.)、素材候補としてヤギのミルクに着目した。

最初にヤギミルク由来のエクソソームを抽出し、3種類のロットでmiR-365aの含有量を確認し、いずれのロットでも同程度のmiR-365aが含まれていることが確認できた。次に、ヤギミルク由来エクソソームが老齢細胞に届くことを検証し、細胞内にエクソソームが取り込まれていることを確認できた。それに伴い、細胞内miR-365aが増加していることも確認した。

3.ヤギミルク由来エクソソームが細胞の老化抑制とコラーゲン・エラスチン産生を促進することを発見

ヤギミルク由来エクソソームが、コラーゲンとエラスチン産生に与える影響を検証した。その結果、ヤギミルク由来エクソソームを老齢細胞へ添加することにより、細胞の老化マーカーの発現が低下し、1型コラーゲンやエラスチン産生量が増加することを発見した。

このことから、ヤギミルク由来エクソソームが細胞の老化抑制に働き、コラーゲン・エラスチン産生を高め、皮膚老化に対して有用であることが示唆された。

加齢に伴う皮膚の変化には、線維芽細胞の機能低下やそれに伴うコラーゲンやエラスチン産生力の低下が深く関わっており、これらを制御する新たなアプローチが求められている。同社では、エクソソームに含まれる特定のマイクロRNA(miRNA)の一種であるmiR-365aの機能解析を行い、老化抑制作用を確認した。

また、これらのmiR-365aを安定的に供給・送達できる手段として、エクソソームを豊富に含み抗炎症作用が報告されている「ヤギミルク」に着目した。ヤギミルク由来エクソソームの細胞老化抑制や、それに伴うコラーゲン・エラスチンの産生促進効果は、皮膚のシワやたるみの予防・改善に対して効果を発揮することが期待される。

今後もさらに皮膚老化研究や有効成分の探索を進め、新しいアンチエイジング化粧品の開発に向けて生かしていくとしている。