ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業は、メイクの崩れを防ぐ新たな技術を開発した。これまでの概念とは異なり、汗の量などの肌環境や肌質に応じてメイクしたての仕上がりを維持する化粧もち技術として、今後の製品に活用される。
季節や年代を問わず「毛穴の目立ち」は常に上位にあがる肌悩みだ。毛穴の悩みは、「朝きれいに仕上げたメイクが崩れてしまう」といったベースメイクの崩れとも関連がある。崩れの主な原因は、汗の水分によってメイクの膜が弱くなり、毛穴の部分に落ち込むなどして深いひび割れや穴が生じたり、汗に溶けて液状になったメイク膜が肌の上を流れ、表面に大きく不均一な凹凸(ヨレ)が生まれたりすることだ。こうした状態になると、メイク膜は光をきれいに拡散できず、毛穴の影やくすみ、さらには皮脂浮きによるテカリが目立ってしまう。
従来の化粧もち向上技術は、撥水性を高めることで汗をはじくか、粉体などの成分に汗を吸収させる手法が主流だった。しかし、汗の量は人それぞれであり、また夏場などは汗の多さに対応しきれず、キレイなベースメイクの持続時間は極端に短くなってしまう。
そこで、メイク膜のしなやかさを保ったまま、膜そのものに汗を吸収し一体化させることができれば、ひび割れや流動を防ぎ、きれいな仕上がりが続くのではないかと考えた。さらに汗を取り込むことで膜表面の状態が整い光拡散性が向上する性質を持たせることも目指した。これにより、時間がたっても毛穴が目立たず、つるんと滑らかで崩れのない仕上がりが続く(図1)。
さまざまな化粧品素材をテストし、膜のベースとなり汗を吸収し一体化できる素材(水とのなじみが非常に良く汗を抱え込む性質をもつ)と、汗を取り込むことで膜の光拡散性を高める素材(表面を適度な滑らかさに整える性質をもつ)を見出した。これらを最適なバランスで組み合わせることで、ひび割れたり流れたりしにくく、しかも光拡散性に優れたベースメイク技術を確立した。同技術を用いたメイク品で膜を作り、汗をかいた状態を実践的に再現すると、汗の量が多いほど光拡散率が高くなることが確かめられた(図2)。これにより、汗によって毛穴補正効果が向上し、つるんと滑らかな仕上がりをキープできると考えられる。
メイク下地は、メイク膜の土台を形成することから、皮膚から分泌される汗を素早く吸収し、メイクへの影響を最小限に抑えるのに適していると考えられる。そこで同技術を活用したメイク下地で効果を検証した。
その結果、従来技術を活用した比較対象に比べて、メイクしてから時間が経過しても毛穴などの凹凸やくすみがほとんど目立たず、つるんと滑らかな仕上がりが続くことが確認できた(図3)。さらに、新技術を活用した下地の毛穴補正効果に関する満足度調査では、84%の専門評価者が満足と判定した(図4)。