ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業は、中京大学スポーツ科学部の松本孝朗教授らの研究チームと共同で、サーモカメラから得られた運動時の人の顔、耳介部(耳たぶを含む耳全体の領域のこと)の皮膚温から直腸温(深部体温)を推定するためのベース技術を開発した。

また、本技術は、2024年11月22~24日に法政大学 市ヶ谷キャンパスにて開催された第63回日本生気象学会大会にて、「運動時の人の耳介部皮膚温(サーモグラム)から直腸温を推定する試み」の演題名で学術発表している。

ポーラ化成工業では、取り組みの一つとして、喫緊の社会課題ともなっている猛暑下の労働・運動時の深部体温の変化について研究を行っている。深部体温の上昇が人体に与える影響は、暑熱環境での運動、作業中に深刻な問題となることがある。深部体温による正確な体温の測定が有用な対策とされる一方、既存の体温計やサーモカメラによる方法で深部体温を把握することは難しく、作業現場などで簡便に測定を行うことは容易ではない。そこで、より簡便な測定方法として、顔画像の変化から深部体温の上昇を捉える技術開発を検討している。

今回、運動習慣を有する中京大学の男子学生15名を対象に、自転車運動をすることで深部体温の上昇を引き起こしながら、サーモカメラによって顔・耳介部を撮影し、顔に表れる変化を捉える試験(図1)を実施した。

顔・耳介部の皮膚温と深部体温の関係について解析を行った結果(図2)、耳介部の皮膚温は顔と比較して深部体温との相関が相対的に高く、深部体温の推定精度が高いことが分かった。

従来、耳はラジエーターのように体温調節機能を担っていると考えられてきた。耳介部の皮膚温と深部体温に関係があったことから、体温上昇が起きた際に耳介部からの熱放散が起きること、および耳介部の変化を確認することで深部体温の上昇を確認できる可能性が示唆されたといえる。