資生堂は、東京科学大学の清水重臣特別教授との共同研究により、細胞内の不要な物質を分解し再構築するメカニズムとして知られるオートファジーの中でも、特に細胞が過度のダメージを負ったときに機能する”オルタナティブオートファジー”が、紫外線による肌の光老化を抑制する働きを持つことを明らかにした。また、”オルタナティブオートファジー”を活性化させる「毛葉香茶菜(もうようこうちゃさい)エキス」を見出した。

”オルタナティブオートファジー”は、2009年に東京科学大学(旧東京医科歯科大学)総合研究院 高等研究府プロジェクト研究部門 病態細胞生物学研究室の清水教授によって発見され”第二のオートファジー”とも呼ばれる。紫外線などが原因で細胞が過度なダメージを受けた際に働き、損傷したミトコンドリアなど細胞内の不要物を壊し再構築する仕組みで、通常のオートファジーとは異なる。これまでに”オルタナティブオートファジー”が肌の健康維持に関連していることは分かっていたが、資生堂との共同研究で、新たに紫外線による肌の光老化を抑制する働きがあることを解明した。

光老化によるシミ・シワ・たるみは、いつの時代も多くの人々が抱える肌悩みである。今回の共同研究の知見から開発したソリューションによって、従来の紫外線防御剤や抗炎症剤といった外側からのアプローチに加え、肌の内側からもそれらの肌悩みを防ぐ画期的なアプローチが可能になった。

なお、この研究成果は、国際科学雑誌であるJournal of Biological Chemistry(24年3月16日付け)およびAutophagy Reports(24年9月5日付け)に掲載された。

資生堂は、肌の光老化についてまだ広く知られていなかった100年以上前から、いち早く紫外線防御研究に着手し、あらゆる環境下でも紫外線の悪影響から肌を守りたいという生活者のニーズに応えるべく、技術開発を行ってきた。昨今、紫外線防御機能と高いスキンケア機能を兼ね備えた日中用化粧品の需要が高まる中で、同社はどのようにしてその期待に応えるべきか考えてきた。そこで、肌の健康維持のために細胞自らが備えている仕組み”オルタナティブオートファジー”と、紫外線との関係を詳しく知ることが、生活者の期待に応える鍵になるのではと考え、研究に着手した。

はじめに、表皮細胞に紫外線(UVB)を照射すると、表皮細胞内のミトコンドリアが損傷することが分かった。また紫外線により損傷したミトコンドリアの周辺では、炎症を指令するたんぱく質集団であるインフラマソームが活性化し、炎症性因子を発していることを確認した。次に”オルタナティブオートファジー”を活性化させると、炎症性因子が抑えられることが分かった。”オルタナティブオートファジー”が働くことで、損傷したミトコンドリアが分解され、それに伴い細胞の炎症も抑えられたと考えられる。

次に、”オルタナティブオートファジー”が働かずに炎症性因子が表皮細胞の外に放出され、その影響が真皮細胞に及ぶようになると、コラーゲン分解酵素(MMP)の発現が高まることが分かった。つまり、”オルタナティブオートファジー”が働かない肌は真皮コラーゲンの分解が進み、光老化へ繋がってしまう可能性がある。また”オルタナティブオートファジー”は、加齢で機能低下する可能性があることも分かった。

そこで、”オルタナティブオートファジー”を活性化させるエキスとして「毛葉香茶菜エキス」を見出した。これにより、”オルタナティブオートファジー”の機能は年齢に左右されず活発な状態が保たれ、紫外線を浴びても細胞内の健やかな環境が維持されるため、真皮コラーゲンの分解、肌の光老化の抑制に繋がることが期待できる。