コーセーは、社会的時差ぼけ「ソーシャルジェットラグ」が毛穴の目立ちや顔の赤みを引き起こすことを確認した。平日と休日の就寝・起床時刻のズレに起因するソーシャルジェットラグは、週末だけつい夜更かししたり、休日の朝は寝坊したりするなど、現代では珍しくない睡眠習慣だ。しかし、今回の研究結果から、肌を健やかに保つためには十分な睡眠時間だけではなく、規則的な睡眠習慣も望ましいことが分かった。

本研究成果の一部は24年9月24~27日にスペインで開催されたSleep Europe 2024–The 27th Congress of the European Sleep Research Societyおよび、24年11月2~3日に岩手県で開催された第29回日本顔学会大会にて発表し、日本顔学会においてオーディエンス賞を受賞した。

ソーシャルジェットラグの肌への影響

睡眠不足は肌のターンオーバー(生まれ変わり)を乱れさせたり、血行が悪くなることでクマをできやすくしたりと美容と密接な関係がある。“眠らない国”として知られる日本では慢性的な睡眠不足は大きな課題だが、睡眠習慣の乱れも珍しいことではない。例えば、平日の睡眠不足を取り戻そうと休日に昼近くまで眠る「寝だめ」をしたり、平日にできなかったことをするために休日はつい夜更かしをしたりする、といったことが挙げられる。このような平日と休日の就寝・起床時刻のズレは体内時計の乱れを引き起こし、まるで時差ぼけのような状態になることから、「社会的時差ぼけ」または「ソーシャルジェットラグ」と呼ばれている。ソーシャルジェットラグはドイツの時間生物学者であるTillRoenneberg教授が06年に提唱した比較的新しい概念であり、近年、ソーシャルジェットラグによる心理的不調のほか、肥満や生活習慣病などの身体への影響も明らかとなってきている。そこで本研究では、平日と休日の睡眠の中央時刻の差をソーシャルジェットラグと見なし、その肌への影響を明らかにすることに取り組んだ。

本研究におけるソーシャルジェットラグの説明

はじめにソーシャルジェットラグと自覚する肌悩みの関係を把握すべく、10~20代の日本人女性67名を対象に睡眠習慣と肌悩みのアンケート調査を行った。年齢層は、2時間以上のソーシャルジェットラグが20代付近で特に多く見られることから設定した。アンケート調査では、過去1ヶ月間の平日と休日の睡眠スケジュールからソーシャルジェットラグの大きさ(平日と休日の睡眠時間の中央時刻の差)を算出し、その大きさに応じて「1時間未満」「1時間以上2時間未満」「2時間以上」の三つの群に分類した。その後、21項目の肌悩みを感じている人の割合を集計した。その結果、ソーシャルジェットラグが1時間以上の生活を送る人は、「毛穴の目立ち」や「顔の赤み」に特に悩んでいることが把握できた。

ソーシャルジェットラグと肌悩みに関するアンケート結果

次に、実際にソーシャルジェットラグを模した睡眠介入試験により、肌への影響を評価した。20代の日本人女性23名を対象に、それぞれの被験者の普段の生活リズムにならって、おおむね決まった時間で就寝・起床してもらいながら、週2日間のみ就寝・起床時間を2時間遅らせる睡眠介入を2週間続けた。介入前の7日目、2週間の介入後の16日目、そして介入終了から3日後の19日目に顔の肌測定などを行い、ソーシャルジェットラグが肌に及ぼす影響を評価した。

ソーシャルジェットラグ睡眠介入試験の設計

その結果、2時間のソーシャルジェットラグがあることで、毛穴の目立ちおよび、顔の赤みの増加が確認された。このことは、先のアンケート結果である10~20代の肌悩みとも合致することから、睡眠習慣を整えることの重要性が示唆された。

ソーシャルジェットラグによる、毛穴と顔の赤みの変化