ナリス化粧品は、コロナ禍によるマスクの常時着用によってより重要視されるようになった口紅の色の持続性に関する研究をさらに進め、見た目の色持続やつや感だけでなく、唇の上で心地よく滑らかに伸びる使用感を実現する口紅の処方「フィットフィルム処方」を確立した。
従来から存在した口紅を塗布した時に色が長く持続する効果は、コロナ禍以降はより重要なニーズとなった。同社でもその研究に着手し、2022年7月に「逆転の発想、分離させることで色移りに強いつや口紅の処方を確立」と題したリリースで発表している。現在でもマスクをつける人やつける頻度はコロナ以前と比べて増えており、もはや色持続効果は口紅の基本的な必須機能として求められるほどである。今回の研究はこれまでの研究をさらに深め、持続するだけでなく「より心地よく」をテーマに進化させたものだ。
従来の色持続効果を高める技術は、口紅に配合している揮発油が揮発することで唇への定着度を高めるものだった。ただし揮発して塗布した口紅の厚みが減ることで、つや感が低下することや乾燥や引っ掛かり感を感じてしまうことが課題だった。
つや感については、これまでは高い屈折率の油剤を使用することで高められると同社は考えてきたが、油剤の屈折率よりもワックス量の影響が大きいことを突き止めた。ワックス量が少ないと口紅の折れに繋がるため、適切なワックス量で成形の品質を保持しながら高いつや感を出す配合量を見出した。
色持続については、これまでは塗布すると口紅層と透明オイル層に分かれるために透明オイル層のみが対象物と触れ、対象物に色味が付きづらい「二層分離技術」がこれまでの同社の技術だったが、新しい技術として、唇から蒸発する水分と色持続成分が反応することで、ジェル状の皮膜を形成する「ジェル状皮膜技術」を開発した。この二つの処方を比較すると、二層分離技術は対象物と触れる部分は透明オイル層であるため色移りは少ないものの、透明オイル層がなくなると色移りしてしまうものであり、ジェル状皮膜技術は色が長く持続するものの、二層分離に比べて色移りしやすいことが分かった。そこでこの二つの処方を組み合わせることで、外的な擦れにもより色落ちしづらい口紅の処方化に至った。この処方は、唇と接する部分が固めのジェル状で、フィット感が高く唇の乾燥や引っ掛かりが少ないものだ。色持続だけでなく、つや感やなめらかさを両立し心地よく使用できる新処方を「フィットフィルム処方」と名付けた。実際にマスクに使用される不織布に口紅を塗布した唇を押し当てた確認からも、これまでの技術を上回っていることが確認できた。
研究開発部の大野利晃氏は、「2022年に行った研究内容をさらに更新できたことは開発者にとって大きな喜びです。コロナ禍によるマスクの着用の習慣の変化は、今ではマスクが当然のものとして定着し、以前からあった口紅の色持続へのニーズは、一過性のものでなく、基本的なニーズに変化しました。口紅の色の持続となめらかなつけ心地の両方を叶えることは、開発者にとって非常にハードルが高いことですが、コロナ禍がなければ、ここまでの技術の進化はなかったのかもしれません。当社では、様々なシチュエーションの中で使用する人が心地よく使える化粧品や、その人が長く輝ける化粧品の開発を目指します。」とコメントしている。