顧客の心理に寄り添うのはブランドの生命線

「当初の美白美容液の単品企画は却下しました」。こう口火を切るのは、アテニアの斎藤智子社長だ。同社は2021年4月15日、薬用美白エイジングケアライン「ドレススノー」を発売した。美白とシワ改善への同時アプローチが最大の特徴で、アテニア初の美白をうたうラインである。1989年創業のアテニアが30年以上も美白カテゴリーを避けてきたのには理由がある。それは40代女性にターゲットを絞り込んだエイジングケア専門ブランドとして、確かな効能効果を示す根拠、すなわち競合との明確な差別性を必要としたからだ。それがなければ、ファンの期待を裏切ることになり、競合ブランドへのスイッチを引き起こす。冒頭の斎藤社長の言葉は、商品開発への強いこだわりを示したものに他ならない。

ドレススノーの開発は、2019年3月1日に斎藤氏がアテニア社長に就いてから始まった。19年は創業30周年の節目の年で、成長持続に向けて経営課題を洗い出していた。一つは、日本女性のスキンケアニーズである保湿、ハリ・弾力に続く美白ケアに応えておらず、機会損失を招いていること。もう一つは、ブランド認知度は約6割と高いものの、特徴認知の横ばいが続いていることであった。その一因は、ブランドコンセプトの「一流ブランドの品質を、1/3価格で提供することに挑戦し続けます」にある。近年、マーケティング戦略の軸は、広告から生活者や消費者など第三者による口コミ重視へと変わっている。アテニアのブランドコンセプトは、コストパフォーマンス重視と捉えられがちであるがゆえに、商品に満足する消費者を増やすことはできても、自発的なレコメンドを増やすことは難しい。だから、ブランド認知が広がっても、エイジングケアブランドとしての特徴は、生活者に浸透していなかった。この流れを変えるには、際立つ特徴を持つアテニアらしい商品が必要。これらの経営課題の解決策として美白カテゴリーへの参入が決まった。しかし、ドレススノーの商品開発を担当した事業戦略本部商品企画部商品企画第一グループの田中良枝主査が最初に提案した美白美容液は、斎藤社長が却下。その理由について、斎藤社長は次のように説明する。

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