トレンダーズは、Xと共同で、Xにおける美容情報の発信や検索に関する調査分析を実施している。第一弾「日焼け止め」、第二弾「美容成分」に関する調査に続く第三弾として、「ヘアケア」に関する調査を行った。

高価格帯市場の活況や韓国ブランドの上陸など、昨今のヘアケア市場は競争環境が激化しており、それに伴い各社がマーケティング活動を強化している。そこで今回のトレンダーズと Xの共同調査では、Xにおけるヘアケアに関する発話の実態やトレンドについて調査・分析を行った。まずはじめに、ヘアケアプロダクト(「シャンプー」「コンディショナー」「トリートメント」「ヘアマスク」のワードを含む投稿)に関する X内での投稿量について、過去10年間の推移を調査した。

年間の投稿量推移を見てみると、2014年と2023年ではヘアケアプロダクトに関する投稿量は約1.3倍に増加している。2016年から2020年は減少傾向にあるものの、2021年から再び増加傾向に転じており、2023年はこの10年間において過去最多の年間投稿量となっている。この2021年からヘアケアプロダクトに関する投稿量が増えた1つの要因としてあげられるのが、ヘアケア専門家による投稿量の増加。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、自宅で過ごす時間が増えた美容師をはじめとしたヘアケアの専門家が、2020年後半頃からオススメの商品やヘアケアテクニックなどをXで紹介するようになった。その影響によって美容情報に特化して情報発信をしている「美容アカウント」や美容に関するリテラシーが高く積極的に情報発信を行う「美容オタク」によるヘアケアプロダクトに関する投稿量も増加。そして 2022年になると、ヘアケアリテラシーや美容リテラシーがそこまで高くない、「美容ミーハー」、「美容マス」層も自らの髪の悩みについて投稿したり、X内でヘアケアに関する情報を収集するようになったと考えられる。

2024年4月21日から7月17日の約3カ月間の、ヘアケアプロダクトに関する投稿量をプロダクト別に見てみると、「シャンプー」が最も多く、次いで「トリートメント」「コンディショナー」の順となった。「シャンプー」の投稿量は「トリートメント」の約 1.9倍。一方で同じく 2024年4月から7月のX内の検索ボリュームを見てみると、「シャンプー」が「トリートメント」の約3.9倍と、投稿量以上に他プロダクトとの差が大きいという結果となった。

「シャンプー」のX内検索における関連ワードを見てみると、「ブランド名」×「シャンプー」の検索数が、検索数1000件以上のワードの検索総数を母数とした比率で見たときに全体の約27%を占めており、ユーザーがX内での商品口コミを閲覧する目的で検索していることが伺える結果となった。

続いて、「髪の悩み(「髪」×「うねり」「ぱさつき」「くせ毛」「ダメージ(傷み)」「枝毛、切れ毛」「臭い(頭皮)」「絡まり」「乾燥」「カラーダメージ(ヘアカラーによる髪ダメージ)」「アホ毛」のワードを含む投稿)」に関するXの投稿量について、同じく過去10年間の推移を調査した。

髪の悩みに関するXの投稿量は2022年から急激に増加しており、10年前の2014年と2023年を比較すると約2.2倍にまで増加している。ヘアケアプロダクトと同様に、美容ミーハー・美容マス層が髪の悩みについて活発に投稿したり情報交換したりするようになったことが要因と思われる。

さらに髪の悩みのワード別に、2023年の月ごとの投稿量推移を見てみると、4月には「うねり」が増加しており、8月には「ダメージ(傷み)」が突出して増加していることが分かった。

4月には「うねり」、8月には「ダメージ」対策を訴求したPR投稿が一時的に増加しており、その影響により「うねり」「ダメージ」という悩みワードが投稿されたことが増加の要因といえそうだ。

また髪の悩みに関する全体的な投稿内容の傾向としては、「乾燥×ダメージ」「ぱさつき×うねり」といったように、複数の悩みワードを掛け合わせた投稿が増えていることがあげられる。一方で 2024年4月21日から7月17日の約3カ月間の髪の悩みに関するX内の検索ボリュームを調査したところ、「アホ毛」が最も多く約12万件、次いで「くせ毛」約7万件、「枝毛、切れ毛」約5万件という順位となった。

検索ボリュームが最も多い「アホ毛」について、検索における関連ワードを見てみると、「スティック」「シャンプー」といったプロダクトのカテゴリワードやブランド名が多く、アホ毛の悩みの対策商品を探したり口コミを検索したりしている様子が伺える結果となった。

今回の調査では、ヘアケアプロダクトに関するXにおける投稿量が特にここ数年で増加していること、また髪の悩みに関する投稿量は比率で見たところプロダクト以上に急増していることが分かった。そして、プロダクト・悩みの両軸において、X内で口コミを検索して商品を探している様子が伺えた。その背景には生活者のヘアケア意識の高まりと、髪の悩みの多様化が大きく影響しており、企業がXをマーケティング活用する上では、生活者の多様化するヘアケアニーズに配慮することが不可欠といえる。

今後もトレンダーズはXと共同で、Xにおける美容情報の様々な実態やユーザーインサイトについて、調査分析を重ねていく。