大王製紙の2024年3月期通期業績は、売上高が前年比3.9%増の6716億8800万円と増収、営業利益が143億6700万円、経常利益が96億2200万円、親会社株主に帰属する当期純利益が45億700万円と利益は各段階で黒字化した。国内のメディア用途の紙の一層の市場縮小やホーム&パーソナルケア事業における中国での苦戦はあったが、収益力の復元が一定程度進んだことに加え、ブラジル子会社の収益貢献等の事業ポートフォリオの充実化が進み、1年間で全ての段階利益が黒字に転換した。
紙・板紙事業の売上高は5.0%増の3553億700万円、セグメント利益は159億7400万円(前年同期は1236億900万円の損失)。新聞用紙は、発行部数および頁数の減少により販売数量は前年同期から減少したが、価格改定の浸透によって販売金額は前年同期を上回った。洋紙(新聞用紙を除く)は、デジタル化の加速に伴う需要減少によってチラシやパンフレット用途の紙を中心に販売数量は前年同期から減少したが、価格改定の浸透によって販売金額は前年同期を上回った。
包装用紙は、物価高騰による消費者の買い控えや省包装化の進行等に伴う需要の減少によって販売数量は前年同期から減少したが、価格改定の浸透によって販売金額は前年同期を上回った。板紙・段ボールは、主要用途である食料品や日用品の値上げによって国内需要が低迷し、輸出についても中国をはじめとする国際市場の停滞の影響を受けたことで販売数量は前年同期から減少したが、国内での価格改定の浸透によって販売金額は前年同期を上回った。
ホーム&パーソナルケア事業の売上高は5.1%増の2930億6400万円、セグメント利益は408億700万円の欠損だったが、前年同期より赤字幅は縮小した。国内事業では、衛生用紙は、汎用品から付加価値品への販売シフトに取り組むとともに、トップメーカーとして生活者に支持される価値の提供と価格改定の浸透の両立を推進した。紙加工品は、生活者の要望を反映した新商品やリニューアル商品、著名人やアウトドアブランドとのコラボレーション商品、およびデザイン企画品を連続して市場に投入し好評を得た。また、2023年9月に立ち上げた新ブランド「エリエール Pet キミおもい」によって、ペットケア市場に本格参入した。この結果、国内事業全体としては、新型コロナウイルスの5類感染症移行に伴う需要の減少により除菌関連商品やマスク等で前年同期から販売数量は減少したが、価格改定の浸透により販売金額は前年同期を上回った。
海外事業では、中国は、フェミニンケアの販売拡大が進んだ一方で、主力のベビーケアで景況感の悪化、出生人口の減少、およびALPS処理水の影響を受けて減速したことに加え、生活者の購買動向や市場変化への対応が遅れたことで販売金額は前年同期を下回りました。ブラジルは、各商品の価格改定の浸透に加え、衛生用紙、ベビーケア、フェミニンケアにおける付加価値品の販売が伸長したことで販売金額は前年同期を上回った。