ライオンは、帰宅直後のウイルスの住居内感染リスクを可視化するシミュレーションモデルを開発したと発表した。
感染症予防には、病原体が人の体内に到達するまでの感染経路を遮断することが重要だ。しかし、接触感染では、手指や物に付着した病原体が、どのようにして他の人の手指に移っていくか、これまで十分に分かっていなかったのが実情。今回のライオンの研究では、実態調査に基づく生活者の行動モデリングと、各種材質基板とモデル皮膚を使い、家財・携帯品・手指などに付着したウイルス量を推定するエージェントベースシミュレーションモデルを開発した。
このシミュレーションモデルを用いて、生活者が外出先から自宅に戻ってきた際に生じる、住居内のウイルスの拡散状態を分析。その結果、帰宅前に一定量のウイルスが手に付着したと仮定した場合、帰宅直後から手洗いまでの多くの行動で、室内のさまざまな箇所に手指のウイルスが付着し、これに次の帰宅者が二次接触して、さらに室内に拡散させることが分かった。
玄関内での手指消毒と早めの手洗いなど、帰宅直後の衛生行動のタイミングを工夫すること、また、同居者に感染者がいた場合には、感染者が療養する部屋を出る際に手指消毒を行うことで、他の同居者の二次的なウイルス接触リスクが低減するという結果も得られたことになる。
日常生活におけるウイルスの付着箇所や広がり方が分かれば、より効果的な感染予防対策ができ、予防の負担軽減にもつながる。今後はこのシミュレーションモデルをさらに発展させ、家庭内だけでなく、公共場面における病原体接触リスクを解析し、社会全体の感染予防に向けた衛生行動の提案を目指すとしている。