コンフォートゾーンを徹底的に排除

――ファンケルの2022年度全社方針は「未来を起点に、理念の実行」でした。島田社長が意図するところは、どういうものだったのでしょう。

島田 19年8月、創業者の池森(賢二)さんがキリンホールディングスにファンケルの株を売却しました。それまで創業者、大株主、経営者がイコールだったものが、すべて別々になったわけです。その違いを社員に強く意識してもらいたい。それには私はパラダイムシフトが必要だと社員に呼びかけていたんです。その矢先の20年にコロナ禍が始まり、インバウンド需要を取り込み絶好調だった業績は急落し、文字通り未曾有の危機に直面したわけです。コロナ1年目はがむしゃらに対応しましたよね。休店を余儀なくされた店舗の売り上げは皆無になりましたから。20年以上続けてきたECの利用をお客さまに促したり、社内にスタジオを作ってライブコマースを始めてみたり、多くの企業がDXを迫られているとき、ファンケルは比較的早くから対応できたことは良かった。少し落ち着いて物事を考えられるようになったコロナ2年目は、それまでの施策の精度を高めることができました。しかし、3年目に入ると、さすがに苦しい気持ちになりました。21年下期から広告宣伝への投資を再開し、徐々に成果が出始めているものの、依然として努力に対する成果は少なく、厳しい状況は続いています。その中で心底思ったのは、人材の重要性なんです。コロナの3年間、ロシアのウクライナ侵攻や急激な円安なども重なり、なかなか市場が好転しない中、社員一人一人が試行錯誤を繰り返し、多様な経験を積んで強くなったのは間違いありません。それでも、もっと人材育成に力を入れなければ、ファンケルの未来は切り開けないと痛感したんです。

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