コーセーの2022年12月期第3四半期業績は、売上高2008億8700万円、営業利益124億8100万円、経常利益225億4900万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は138億4100万円だった。21年より12月期決算に移行しているため前年比較はないが、同年1月1日~9月30日と比較すると売上高は7.5%増、営業利益88.6%増、経常利益113.4%増、親会社株主に帰属する四半期純利益222.3%増と実質増収大幅増益となる。売り上げは、中国での断続的なロックダウンの影響、および韓国での売り上げが大幅に減少したものの、日本の専門店・百貨店チャネルにおけるハイプレステージ、欧米を中心に展開する「タルト」が実績を牽引したことにより増収となった。利益面では、下期のイベントやホリデー商戦向けに販売促進費・広告宣伝費は増加した一方で、原価率が低下したことが押し上げ要因になった。

事業別にみると、化粧品事業では、「デコルテ」や「アルビオン」が日本で引き続き好調に推移した一方で、中国(トラベルリテール事業を除く)や韓国では苦戦。それ以外の主要ブランドでは、「ジルスチュアート」「アディクション」が、日本のメイクアップ市場の需要回復に伴い、業績が伸長した。「タルト」は、主力商品や新商品の売り上げを伸ばした。「カルテHD」は敏感肌市場の成長とともに、着実に業績を拡大し、主力ブランドの「雪肌精」も回復基調の兆しだ。これらの結果、売上高は調整後前年同期比8.5%増の1607億4900万円、営業利益は同44.9%増の154億5000万円となった。

コスメタリー事業は、ヘアケアブランドの「スティーブンノル ニューヨーク」、コーセーコスメポートの「クリアターン」などが好調に推移したことで、売上高は同4.2%増の388万3300万円、営業利益は2億6600万円と黒字化した。

その他の事業は、ホテルやゴルフ場向けアメニティ製品の販売やOEM生産の受注が減少したものの、販管費を抑制したことにより、売上高は同5.5%減の13億400万円、営業利益は同55.4%増の7億8400万円だった。

地域別売上高は、日本が専門店・百貨店チャネルにおけるハイプレステージが引き続き好調だったのに加え、ドラッグストアなどのマスチャネルで7~9月が前年同期を上回ったこともあり、売上高は調整後前年同期比7.6%増の1169億9900万円となった。

アジアは、中国のトラベルリテール事業が海南島を中心に堅調に推移している一方で、中国本土は上海などを中心としたロックダウンが6月に解除になったことで、一時的には持ち直しの動きがみられたものの、継続的な経済活動の抑制により減収。韓国のトラベルリテール事業は、中国の渡航規制やドル高ウォン安の為替影響により大幅な減収。これらの結果、売上高は同0.7%減の531億6900万円となった。

北米は、タルトがコンシーラーやマスカラなどの主要カテゴリーの強化、新製品の伸長により、プレステージメイクアップ市場において高い市場シェアを維持。店舗数の拡大に加え、円安進行の影響により、24.5%増の270億9600万円となった。

その他は、タルトがメイクアップブランドの中でも高い成長を維持したこともあり32.9%増の36億2200万円だった。

22年12月期通期業績は、売上高、営業利益を前回公表数値から下方修正。経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益に変更はない。売上高は当初計画から100億円減の2830億円、営業利益は同35億円減の165億円、経常利益は226億円、親会社株主に帰属する当期純利益165億円を見通す。売上高は、中国でのゼロコロナ政策による経済活動の抑制や、韓国での大幅な減収、日本のドラッグストアを中心とするマスチャネルの業績不振の影響を受ける。また、タルトも現地通貨建てでは計画から下振れている。営業利益は、売り上げのネガティブインパクトの影響に加え、中国市場での競争激化に伴う収益性の悪化や、原材料価格の高騰などにより、タルトをはじめとして原価率が引き続き高水準で推移する見通しのため、下方修正した。