コロナ禍で疲弊するメンタルとコミュニケーションの重要性

魚谷雅彦 小林(弘幸)先生は、自律神経研究の第一人者であり、順天堂大学に日本初の便秘外来を開設した「腸のスペシャリスト」でもあります。お話しするのをとても楽しみにしていました。コロナ禍は、生活者の健康意識を高めています。小林先生はこの変化をどのように捉えていらっしゃいますか。

株式会社資生堂代表取締役 社長 CEO・魚谷雅彦

小林弘幸 ポストコロナの方向性を考える上で、大切な視点は、日本の生活者が健康と死を身近に感じたことです。2021年10月以降は、患者さんが少なくなりましたが、ウイルスが広がり始めた頃は、私は強い危機感を持っていました。例えば、外来で普通に会話していた患者さんが、5分ほど席を外して戻ると、呼吸困難に陥っていたからです。私たち医療従事者だけでなく、国民の皆さんが身近に死を感じたことで、健康に対する意識が明らかに強くなっています。また、コロナ禍で医療崩壊が懸念されたのは、日本社会から感染症への危機感がなくなっていたからです。コロナ対応は感染症の専門病院に集約し、他の病院は通常の医療を提供すべきでした。だが実際にはそれが実現できなかった。それゆえに、病の発見、特にがんの発見が通常より遅れてしまうこともあった。さらに外出自粛の影響で、国民の足腰が弱くなったことが指摘できます。転倒して骨折する患者さんも増えています。つまり、コロナ禍により、日本国民の健康状態は、非常に落ち込んでいるのです。国民の健康状態を見直し、今後の厚生戦略を考えなければ、経済の発達は覚束ない、と私は強く思っています。

順天堂大学医学部附属 順天堂医院 総合診療科・病院管理学 教授・小林弘幸

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