美容メディアの「MimiTV」が普及したと考えられているワード、「バズコスメ」
SNSを起点に大きな話題を呼び、売上を伸ばしたヒット商品を意味する。

直近の代表例は、KATEのリップアイテム「リップモンスター」だ。セルフ口紅市場のシェアを55%以上獲得し、発売4か月の累計出荷数は100万本を超えている(※1)。コロナ禍によるリップ需要も減っているなか、異例のヒット商品だ。

ホットリンクのSNS分析ツール「BuzzSpreader Powered by クチコミ@係長」で調べると、発売日の2021年5月1日から11月5日時点まで、Twitter上には約10万件のクチコミが投稿されている(※データは10%サンプリングで算出しているため、10倍かけた推定実数値を記載)。

下記のグラフは、20年11月~21年10月の約1年間で、若年層をターゲットにしたプチプラコスメブランドのUGC数を比較したものだ。UGCとは「User Generated Content」の略語であり、ユーザーの投稿(クチコミ)を指す。

 

青い線がKATEだが、他のブランドよりもUGC数が突出している。UGC数のベースラインも、他のブランドと比べて高い(およそ400前後)。

KATE以外のブランドは商品リリース時のみ一時的な伸びを見せているが、後述する「アカウント基盤」が強くないため、バズ発生時のUGC数もKATEほど突き抜けていない。KATEは日頃からSNS上でブランドのUGCが多く投稿されており、自社を話題にしてくれるコミュニティが形成されている可能性がある。UGCが生まれやすい土壌が出来ているため、「バズ」が起きたとき、他ブランドよりも投稿数が多く、それが拡散されやすい状態になっていることが考えられる。

リップモンスターは、TikTokの体験動画施策や、発売前の美容メディアや自社アカウントでのTwitter投稿など、積極的なSNS活用も手伝い、反響を生み出すことに成功した。『コスモポリタン日本版』の記事によると、発売から5か月経った10月時点でも、SNSやYoutubeを中心に話題になっているそうだ(※2)。

バズコスメを生むためのSNS活用に必要なことはなんだろうか?

第一に、バズるための要素は、プロモーションだけではなく、マーケティングの4P(商品・価格・流通・販促)のあらゆる要素に盛り込んでおくことが前提だ。

特に商品力がものをいう。ユーザーのニーズに応える機能、「インスタ映え」するパッケージなど、ユーザーが「SNSに思わず投稿したくなる(使用感が優れている・パッケージが魅力的など)」ツボを押さえた商品開発に取り組む必要がある。

プロモーション面では、発売前から商品の魅力を伝える「ティザー」施策が重要だ。新商品を話題化させたい場合、ユーザーの期待感を盛り上げるティザー施策は特に効果的だ。

あるコスメブランドでは、以前は商品の発売後に、詳しい使い方を解説するハウツー動画を発信していたが、うまく話題化できなかった。その失敗から、「商品が認知されていない状態で解説動画を発信しても、ユーザーの関心を引くことは難しいのではないか?人は知らない情報については話題にしないし、キャッチアップもしてくれないだろう」という仮説を立て、商品名やパッケージなど、まずは商品を知ってもらう施策を実施。結果、商品発売後に大きな反響を得られた。

ティザー施策の役割は、新商品のローンチ前から「期待されている状態」を作ることだ。KATEが行なったTikTok企画やTwitter投稿、先ほどのブランドの事例は、ティザー施策のわかりやすい成功例である。

ローンチ後の定期的なキャンペーンの実施、UGCが発生しやすいハッシュタグの設計なども、バズコスメへとつながる有効策だ。PRとの連動も重要である。バズが起きたら、影響力の高い美容垢や美容系メディアにピッチし、発信してもらえる確率を高めておく。他媒体でも紹介されると、自社アカウントだけでは届かなかったユーザー層への波及も期待できる。

ただし、ティザーからローンチ後のアクションのみに取り組めばバズコスメの創出に成功するわけではない。これらの施策に加え、なによりも重要なのは、日々のSNS活用でアカウントの基盤を作ること自社の情報を積極的に拡散してくれたり、日頃からUGCを出してくれたりするコミュニティを形成し、SNS上で自社ブランドが常に話題になっている状態を作るのが理想だろう。

それには、自社のUGCは定期的にリポストする、UGC創出のネタを用意するなど、日々の地道なアクションが鍵となる。UGCを創出するような投稿のアイディアは、顧客の心理を把握することから生まれやすい。例えばギフトに強いあるブランドは、「ギフトを友達に送る際、どのような状態で届くかわからないと不安」という心理に応えるように、ギフトが届いた際の開封動画をインスタグラムのリールで流している。

ホットリンクが支援するミルボンでは、診断チャートやユーザーの悩みを解決するような投稿が喜ばれており、UGCを生む鉄板ネタとなった。ユーザーニーズを汲んだ上記のような施策は、いいね!数や保存数の増加など、エンゲージメントを高めやすいため、結果的にUGC創出につながるケースが多いのだ。エンゲージメントが高い状態が常に作れれば、商品リリース後の盛り上がりを加速させることも可能である。

バズコスメといっても、発売後に突然「バズる」わけではない。UGCを出してもらう施策を日常的に行ない、常に自社を話題に出してくれるコミュニティを作ってこそ、新商品の発売時に大きな反響を得られやすくなるのだ。

・バズる要素を含んだ商品を開発する

・発売前からティザー施策を仕込む

・日々のSNS活用で、自社のUGCを普段から出してくれるコミュニティを形成する

以上の3点が、バズコスメを生み出すポイントである。

いずれも、「どれだけ顧客と向き合っているか」が成功を左右するだろう自社の顧客はどんなことを考え、何に悩み、どんな情報を見ており、何に関心を持っているのか。こうしたユーザーニーズが把握できなければ、顧客の興味関心から外れた施策を展開してしまう可能性が高い。

ブランドのファン、あるいはファンになりそうなユーザーを理解したうえで接点を持ち、自社のUGCを出してもらい、コミュニティを形成する。日々の地道な活動が、話題化(バズる)の土壌となり、巡り巡ってバズコスメを生み出すのだ。

株式会社ホットリンク

グローバルでのソーシャル・ビッグデータの流通と分析ソリューションの提供により、ソーシャル・ビッグデータを価値化する企業である。市場や自社・競合、顧客の声やキャンペーン反響などの各種調査、ターゲットユーザーのプロファイリング、ブームの兆し発見などマーケティングROI(投資収益率)向上や製品改善、経営革新や予測など、ビジネスにおけるソーシャル・ビッグデータの幅広い活用を支援している。さらにデータを基にプロモーションも提供することで、クライアントのSNSマーケティング全般をサポートする。
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[サービスに関する問い合わせ先]
https://www.hottolink.co.jp/service/contact/

(※1)参考:国際商業オンライン「メイク市場 復活への糸口 ― 化粧がしたい生活者の潜在ニーズ発掘の巧拙」掲載の花王調べデータ。

https://kokusaishogyo-online.jp/2021/10/65529

(※2)参考:ハースト婦人画報社『コスモポリタン日本版』、2021/10/21、
末永陽子「手に入れたい♡SNSで話題を呼んだ『バズりコスメ』10選」
https://www.cosmopolitan.com/jp/beauty-fashion/makeup/a37921574/smash-hit-cosmetics-2021/

月刊『国際商業』2022年02月号掲載