ユニ・チャームは10月13日、遠隔地からでもリアルタイムに顧客の生活実態や表情の変化、製品改良や設備稼働に欠かすことのできない品質安定性の監視といった細部に渡る観察や、的確な指示が可能な「デジタルスクラムシステム」を開発したと発表した。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の目的は、新商品の開発や新改良品、あるいは新規のカテゴリー開発につながる顧客インサイトの発見にある。そうした中、ユニ・チャームでは、顧客インサイトは、人を動かす隠れたニーズであり、消費者自身も気付いていない無意識の心理に迫ることとの考えを示している。

新型コロナウイルス感染症が世界中で拡大し、国内から海外への出張の禁止に加えて、地域によってはロックダウンにより、顧客へのインタビュー調査および生産設備のメンテナンスの中止や延期をせざるを得ない状態が長期化している。こうした環境において、海外では現地スタッフだけで全て対応しなければならず、商品開発や生産設備稼働の遅れにつながるケースもある。

今回導入する、最新のデジタル技術を駆使した「デジタルスクラムシステム」は、10分の1ミリの精度で顧客の表情や繊維の微細な変化、設備の点検や修理箇所の特定など、数千キロ離れた場所からでも臨場感をもって把握できるというものだ。

このデジタルスクラムシステムの活用例として、以下のようなことが挙げられる。

・現地で少人数のスタッフが顧客宅を訪問しデジタルスクラムシステムを設置後、画面を通して複数の開発者や調査員がありのままの生活環境や表情を見ながら、本人と直接対話できるようになった。

・赤ちゃんからお年寄り、ペットの居住空間を複数の現地法人から24時間遠隔モニタリングでき、各々の国の文化や生活習慣、顧客ニーズの違いや変化をリアルタイムに把握することが可能となった。

・世界各国にある生産設備稼働の検証や点検、調整をミリ単位で視認でき、自社内におけるベストプラクティスを即時試しながら新製品生産機の導入検証を実施することが可能となった。

同社はこれまで3現主義(現場・現物・現時点)を重視し、国や地域に密着したマーケティングで商品開発を行い、可能な限り地産地消にこだわった生産体制を構築している。そのため、まず自らが「一次情報」に直接触れ観察することで、本質を捉えて問題を早期に発見し、課題解決に努めてきた。

今後は、これまで重視してきた3現主義に加えて、「デジタルスクラムシステム」を組み合わせたハイブリッド型によって、遠隔地にいながら関係者がタイムリーに支援可能な体制を推進する考えだ。