塩原将志は、アートアドバイザーである。著名な美術コレクションを築くには、パトロンに寄り添い、的確な助言が必要で、それをアートアドバイザーが担う。後編では、その具体的な事例をひもときつつ、現代社会とアートの関係性について考察する。

ゲスト 塩原将志(アート・オフィス・シオバラ代表/アートアドバイザー)

ファシリテーター 菊池麻衣子(「パトロンプロジェクト」主宰)

菊池麻衣子(以下、菊池) 良い作品を入手するノウハウを得たのちに、アートアドバイザーとして独立されたのですね。企業コレクションである「ミスミ・コレクション」の形成と、20年以上携わっていらっしゃる個人コレクションである「タグチアートコレクション」の形成についてお話を伺いたいです。

展示風景「夢みるチカラータグチ・アートコレクション×いわき市立美術館」いわき市立美術館 2021 撮影:白圡亮次

塩原将志(以下、塩原) ミスミ・コレクションは、ミスミグループ創業者の田口弘さんがミスミ社長在職時にアメリカン・ポップアートの版画を中心として築いたもので、私は後半のコレクション形成に関わりました。価値あるコレクションを形成するためには、長期視点で、調査や研究に時間と労力を費やす必要があります。企業の経営者は、それをしたくてもとても時間がとれないので、アートアドバイザーに任せるのです。田口さんは、日本でそのサービスをいち早く活用した方でもあります。

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