資生堂の2021年12月期第1四半期決算は、売上高が前年同期比7.5%増の2440億1100万円、営業利益が67.6%増の108億8400万円、経常利益が128.9%増の138億5400万円と増収増益となった。売上高は、日本を除いた全ての地域で成長し、戦略的に投資強化を進めているスキンビューティーブランドが成長をけん引、またE コマースもプレステージを中心に引き続き伸長し増収。営業利益は、売上増に伴う差益増に加え、マーケティング投資や経費等において市場環境の変化に合わせた適切なリソースアロケーションを行ったことなどにより増加した。

親会社株主に帰属する四半期純利益は、DOLCE&GABBANA 社とのライセンス契約解消に伴う商標権の減損損失を計上したことなどから、15億2700万円の損失となった。

事業別売上高をみると、最も構成比の高い日本事業が12.1%減の752億8600万円と減収。ライブコマースやWEBカウンセリングを強化するなど、得意先と協働して店頭とオンラインの融合に取り組み、多くのお客との接点を拡大し、Eコマース売り上げは前年を上回って成長。一方、新型コロナウイルス感染症再拡大により、緊急事態宣言を受けた小売店の時短営業や外出自粛に伴う消費マインドの低下等の影響を受けた。またインバウンド需要も減少。

海外においては、中国を中心にすべての地域でプラス成長へ転換。中国事業は、オフライン・オンラインともに力強く成長し、19年対比でも成長を加速。「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」「イプサ」などスキンビューティーブランドを中心にマーケティング投資を強化し、婦人節や資生堂中国40周年のプロモーションも好調に推移し、46.8%増の653億4900万円となった。アジアパシフィック事業は9.6%増の165億2700万円、米州事業は4.6%増の243億7100万円、欧州事業は19.6%増の244億4000万円となった。

トラベルリテール事業は、0.7%増の279億8200万円。国際線の大幅減便に伴うグローバルでの旅行者の減少等の影響を受けた。一方、中国海南島では国内旅行者数が引き続き増加しており、店舗数の拡大やプロモーションの強化等を実施。また、「イプサ」や「エリクシール」などの店頭カウンターの展開強化に取り組んだことなどにより、アジアでは前年を上回る成長となった。

ヘアサロン向けのヘアケア、スタイリング剤、ヘアカラー剤やパーマ剤などの技術商材を日本、中国、アジアパシフィックで販売するプロフェッショナル事業は25.4%増の36億800万円となった。

21年12月期通期業績予想は、既存ビジネスでの売上高・利益について期初予想に変更はないが、パーソナルケア事業譲渡・合弁事業化に伴う下期の売上高、営業利益減少影響および事業譲渡後のパーソナルケア商品の製品供給を譲渡先新会社に対して継続する影響を織り込み、売上高は 330億円減額し1兆670億円、営業利益は80億円減額し270 億円とそれぞれ予想数値を修正。親会社株主に帰属する当期純利益は、上記事業に関わる株式譲渡益等を特別利益として870億円計上する一方、DOLCE&GABBANA社とのライセンス契約解消に伴う商標権の減損損失等を特別損失として350億円を計上すること、また欧州において組織最適化に向けた構造改革を実施すること等から、前回予想に対し240 億円増額し、355億円となる見込みだ。

月刊『国際商業』2021年07月号掲載