日中ECの市場を分析するデータサービスを提供するNintは、11月29日、今年の独身の日(W11)商戦を分析するセミナーを開催した。

同セミナーには、Nintの吉野順子社長の他、データとテクノロジーを活用したコンサル事業などを行うSupershipの小林賢太朗中国事業推進室室長、中国人消費者向けのプロモーションや越境販売サポート事業を行うクロスシーの渡辺大介社長、Coloreegoの若林勇司執行役員が登壇。それぞれの事業の紹介と、異なる立場からの今年のW11への見解、越境EC事業でのポイントなどを解説した。

吉野社長によれば、今年アリババのW11の流通内訳は天猫が2.87兆円、タオバオその他が1.28兆円。さらに、その天猫の中では天猫国際が1173億円で4.3%を占めた。天猫内で最も売り上げを伸ばしたのはデジタル製品家電。また、上位5カテゴリーの中で、昨対比最も高い伸長率を見せたのは美容関連のカテゴリーで、159%。次いで食品・健康カテゴリーで130%だった。

天猫においては、化粧品の上位10ブランドが昨対比200%を超える売り上げを見せ、他のカテゴリーブランドに比べてかなり高い成長を見せた。中でも3位のエスティローダーが特に大きく伸長しており、その理由について吉野社長は「W11前からマーケティングに注力し、ライブ配信を期間中毎日実施していた。またそのライブ配信に起用するKOLも若者に人気の人物を選出し、新規の若い客を獲得するための一大チャンスとしてW11を有効に活用したことが大きい」と分析した。

一方の天猫国際では、美容関連カテゴリーが売り上げの4割以上を占め、W11商戦の中心的存在となった。化粧品の上位10ブランドは昨対比平均178%の伸長。中でも注目したのは5位のキュレルの躍進だ。キュレルは国内ECである天猫には旗艦店をオープンしているが、天猫国際にはアリババの直営スーパーやヘルスケア旗艦店、マツモトキヨシ、サンドラッグなどの小売りの旗艦店で販売し、成功している。

また、吉野社長は今年の状況を振り返り、「来年はライブコマースがもっと使われるようになる。今年も、主要なKOLは多くのブランドで使われていたので、そうした状況の中でいかに差異を出すかというのが重要な差別化のポイントとなるでしょう」と来年の見通しを語った。

セミナー第二部の小林室長、渡辺社長による講演では、W11の消費者行動をアンケート調査などで分析した後、KOLの属性分析など中国越境事業におけるサポート事業を紹介。「長く、アンバサダーとなってくれるような費用対効果が高いインフルエンサーを選ぶためデータ分析も重要」だと語った。

セミナー第三部では若林執行役員が中国越境EC·ライブコマース、中国越境EC販売チャネル、訪日中国人旅行者限定の情報配信などを中心としたマーケティングについて解説。これまでに取り組んだ具体事例を紹介し、「中国でビジネスをする上では、中国系企業とうまく協業していくこと、またマスコミや地域社会、行政に対してコミュニケーションを行い、誰が自分の企業活動に関係するのか、その人たちとどう関係づくりを行うのかという目標作りも重要となる」と指摘した。