ポーラ・オルビスグループのポーラ化成工業は、シミ部位の皮膚内部の構造を研究し、シミ部位の表皮・真皮には神経線維が多いことを見出した。皮膚の内部に存在する神経がシミを誘発している可能性が考えられるという。

現在のシミ改善薬用化粧品や美容医療は、表皮もしくは表皮のメラノサイトに働きかけるものがほとんどである。一方、一度できてしまったシミを完全に消し去ることは難しく、同じ場所に再発してしまうことがあった。そのため、皮膚の奥深くには、シミを誘発する何らかの要因が潜んでいると考えられていた。

ポーラ化成工業は、これまでにシミ発生の根本的な原因を解明すべく、シミができやすい人とできにくい人の遺伝情報の差を網羅的に調べ、「神経」や「筋肉」がシミのできやすさに関連するとの示唆を得ている。神経線維は、皮膚の表面にまで伸びており、皮膚において周囲の細胞に作用を及ぼすと言われている。そこで、皮膚での神経線維の分布がシミの再発に積極的に関わっているのではないかと考え、東京大学生産技術研究所の池内与志穂准教授とともに研究を進めたという。

神経がシミに関与しているのであれば、シミの部位には神経線維が多い可能性がある。ところが、神経線維は縦横無尽に広がるため、分布を捉えるには皮膚を立体のまま観察する必要があった。皮膚に適した手法を検討した結果、組織を透明にしてから見たいものを染色することで、3Dで構造を捉えられるようになった(図1)。

図1 皮膚サンプルの観察方法

今回、確立した観察手法で、シミの部位とその周辺のシミのない部位を比べたところ、シミの部位では神経線維の密度が高まっていることが判明(図2)。

図2 神経線維の分布の違い(同一被験者のシミ部位と、その周辺の正常な部位を比較)

このことから、シミのある部位では神経線維が多くなることでシミを誘発する信号が増えているものと考えられる(図3)。

図3 推察されるシミ誘発メカニズム(イメージ図)

本知見によって、従来の表皮に対するケアで は、発達したままの神経が皮膚内部に居座り続けるために、シミが再発している可能性 が示唆された。神経の発達はシミが生ま れるきっかけにもなっていると考えられ、神経の働きを制御することは、繰り返す シミの根絶や効果的なシミ予防策につながる可能性がある。ポーラ化成工業は、この研究を加速させ、シミの再発・発生を効果的に防ぐ製品やサービスを提供する考えである。