日本ロレアルは、瞬時に変化する脳の活動状態や心的変化を脳波のイメージを用いて解析し、使用者本人が意識する快・不快に影響を与えない程度のごく微量な匂いでも心身に影響するということを世界で初めて明らかにした。なお同研究は、日本ロレアル リサーチ&イノベーションセンターと京都橘大学の兒玉隆之研究室との共同研究で行われたものだ。

今回の研究では匂いによる刺激が心身にどのような影響を与えるか調べるために、イメージ解析を用いて脳の活動状態を測定。3種類のサンプル「アンモニア臭のあるもの」、「アンモニア臭を軽減したもの」、「アンモニア無配合のもの」を被験者に嗅がせたところ、脳のリラックス状態を示すα波の活動はアンモニア臭の量が多くなるにつれ低下していくことがわかった。

また、同被験者にアンケート調査による匂いを嗅いだ際の快・不快の主観的評価を行ったところ、「アンモニア臭を軽減したもの」と「アンモニア無配合のもの」では快・不快に有意な差はなかった。一方、脳活動の測定においては、「アンモニア臭を軽減したもの」と「アンモニア無配合のもの」では、リラックス状態を示すα波の活動に差が確認され、使用者本人が意識する快・不快に影響を与えない程度のごく微量なアンモニアの匂いからも脳は影響を受けていることが判明した。

さらに、匂いを嗅いだ後の脳活動の変化を調べるために、イメージ解析を用いてβ波の活動を測定。喜怒哀楽といった感情変化に伴う神経活動を反映するβ波は、一般的に左脳に高い活動がある場合は心地良い感情と関連があり、右脳に高い活動があると不快な感情と関係することが知られいる。

今回の研究では「アンモニア臭のあるもの」を嗅いだ後では不快な感情が表れる右脳にβ波の活動が認められた。一方、「アンモニア臭を軽減したもの」、「アンモニア無配合のもの」を嗅いだ後はβ波の活動が心地良い感情が表れる左脳に認められたが、これら二つのサンプル間ではβ波の活動に差があることから、心地よい感情の程度にも差があることがわかった。同研究によって初めて、アンモニアの匂いが感情へ与える影響に関する知見を、脳の神経活動レベルで証明することができたことになる。