ロート製薬は、東京大学医学部皮膚科学教室ならびに人体病理学教室との共同研究にて、アトピー性皮膚炎患者の遺伝子解析を進めた結果、角層バリア機能の形成に形成に関わる因子「KPRP」を発見。その機能の解析に至った。

アトピー性皮膚炎は炎症を伴う一般的な皮膚疾患の一つで、遺伝学的要因や環境要因の双方により引き起される疾患として知られている。近年の研究により、その病態形成に皮膚バリア機能の欠損と皮膚免疫の異常の両方が関わっていることが明らかとなっている。これまでに行われたゲノム配列の関連解析の結果により、FLGの遺伝子型とアトピー性皮膚炎の発症に相関があることは示されていたが、一つの因子ではアトピー性皮膚炎の発症や増悪化を説明するには十分ではなく、その他の因子の寄与も考えられていた。そこで同研究では新たなアトピー性皮膚炎の病態形成に関与する因子を特定することを目的としていた。

今回の研究で判明したことは、アトピー性皮膚炎患者の罹患部位の皮膚ではKPRPの発現量が有意に低下しており、日本人のアトピー性皮膚炎の重症度とKPRPの遺伝子型に有意な相関があること。また、KPRPは細胞間接着に関わる構成因子と相互作用するということが示唆されたため、これらの結果からKPRPを介して皮膚表面の角層バリア機能を高めることで、アトピー性皮膚炎の発症や重症化を予防することが期待される。

これらの研究内容は、すでに米国研究皮膚科学会と欧州研究皮膚科学会発行の学術誌「Journal of Investigative Dermatology」(オンライン、2019年3月21日付)に掲載されている。