日本メナード化粧品は、皮膚の幹細胞の培養技術を応用し、独自の人工皮膚モデルを作製することで、皮膚科学研究や化粧品の開発に役立ててきた。今回、ヒトの目元を忠実に再現し、“まばたき”の影響を検証できる新しい人工皮膚モデルの開発に成功した。

皮膚の若々しさは、幹細胞から新しい細胞が作り出されることで維持されている。メナードではこれまでに、皮膚の幹細胞を三次元的に培養し、顔の形状を再現した人工皮膚モデルをはじめとする、よりヒトに近い高度な人工皮膚モデルの作製技術を開発し、皮膚科学研究や化粧品開発に応用してきた。

一方で、顔の皮膚は表情変化などに伴い日常的に伸縮を繰り返しているが、このような皮膚の動的変化を再現することはこれまで困難だった。中でも目元は、1日に約2万回ともいわれる“まばたき”により、絶え間なく動的ストレスを受ける特殊な部位だ。まばたきを人工皮膚モデルで再現するには、長時間にわたり安定してまばたきの動作を繰り返す必要があるが、これまでそのようなモデルは存在しなかった。

今回、ヒトの目元の三次元形状を3Dスキャナーにより取得し、そのデータをもとに、目元の形状を実物大で再現した人工皮膚モデルの作製機構を設計した。同機構には、細胞に培地を供給するための小孔や、皮膚モデルを固定するためのフレームなど、培養とその後の評価を両立させるための特殊な構造を備えている(図1青色部分)。さらに、日常的に繰り返される“まばたき”による細胞への影響を評価するため、長時間にわたりまばたきの動作を自動で行う電動機構を組み込んだ(図1オレンジ色部分)。

図1:まばたきをする人工皮膚モデルのデバイス

これらの技術を統合することで、目元の三次元形状と動的なまばたき運動の双方を再現可能な、革新的な評価デバイスが完成した。同モデルにより、皮膚老化の一因である活性酸素の蓄積を、日常的な皮膚の動きを再現した環境で評価することが可能となった。同技術については特許出願を行っている(特願2026-072079)。

開発したデバイスを用いて、表皮幹細胞および真皮幹細胞から人工皮膚モデルを作製したところ、正常な皮膚組織が形成され、ヒトの目元が忠実に再現されていることを確認できた(図2)。

図2:目元を再現した人工皮膚モデル

また、今回開発したモデルで約2万回のまばたき動作を行った結果、皮膚組織の剥離や破れといった損傷は認められず、評価に耐え得る高い耐久性を有することを確認した。

さらに、約2万回のまばたき動作後に目元周囲の組織を回収し、まばたきが細胞に及ぼす影響を解析した。皮膚老化の一因である活性酸素の蓄積に着目して評価を行った結果、まばたきの負荷が大きいと考えられる領域において、活性酸素の蓄積を示す酸化ストレスマーカーの発現上昇が確認された(図3)。これにより、伸縮などの動的負荷の大きさに応じた細胞ダメージの変動を評価することが可能になった。

図3:まばたき後の人工皮膚モデルの評価

以上より、本研究で開発した人工皮膚モデルは、目元の形状および動的変化を高いレベルで再現しており、まばたきによる細胞への影響を評価できる新たなモデルとして有用であることが示唆された。

今後は同モデルを活用し、目元特有の皮膚の性質や老化メカニズムの解明を進めるとともに、老化メカニズムの解明やスキンケア製品の有効性評価、化粧崩れの評価など、顔の動きを再現した様々な評価系への応用を進めていくとしている。