コーセーは、東京大学高鍋・小畑・岸本研究室との共同研究により、使わなくなった化粧品を環境触媒へとアップサイクルする技術の開発に着手する。

これは日やけ止めをはじめとする化粧品に含まれる酸化亜鉛などの金属酸化物に独自の化学プロセスを施すことで、環境浄化や資源循環、エネルギー分野への活用が期待される触媒に生まれ変わらせる技術だ。すでに酸化亜鉛を用いた技術については特許出願済みであり、今後は他の金属酸化物への展開や応用領域の拡張も視野に入れ、実用化に向けた研究開発を加速していく。

同研究は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成を受けており、2026年1月28~30日に東京にて開催の国際ナノテクノロジー総合展・技術会議 nano tech 2026のNEDOブースにてポスター展示する。

図1:日やけ止めなどを環境触媒にアップサイクル

環境への社会の関心が高まる中、企業のサステナビリティの取り組みがより注目されるようになっている。化粧品業界においても、お客の関心は商品の品質や使い心地に加え、環境への配慮も重視されるようになってきた。コーセーが実施した生活者調査では、化粧品メーカーに求めるサステナビリティの取り組みとして「廃棄物削減・資源循環」を最も重要と捉える生活者が全体の53%を占めた(サステナビリティに関する生活者調査より〈24年コーセー調べ、N=250〉)。

国内では、24年に年間約38.7万トン(24年経済産業省生産動態統計年報のデータに基づき、コーセーにて算出)もの化粧品が生産されており、製造から使用、廃棄に至るまでの各段階で、環境負荷低減に向けた取り組みが進められている。これまで、空容器の回収・再生を中心とした取り組みは着実に広がってきた。

一方、化粧品の中身については、21年から株式会社モーンガータとのメイクアップ商品から絵具をつくる取り組みを実施してきたものの、まだ資源として再活用できる余地が多く残されている。そこで、化粧品の成分に着目した新たなアップサイクル研究の探索を行った。

着目したのは日やけ止めなどに広く用いられている酸化亜鉛などの金属酸化物だ。例えば、酸化亜鉛は日やけ止めには紫外線防御成分として配合される一方で、環境浄化や、二酸化炭素(CO2)からメタノールなどのエネルギー資源を生成する反応をはじめ、さまざまな化学反応を促進する触媒材料として産業的に重要な役割を担っている。

一方で同成分は輸入依存度の高さやリサイクル率の低さなど、その運用には継続的な検討が求められている。そこで同研究では、東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻高鍋・小畑・岸本研究室が有する電磁波による化学反応を活用した独自技術を軸に、使われなくなった化粧品に含まれる金属酸化物を、新たな機能を持つ触媒として再生するプロセスの開発を進めている(図2)。

図2:化粧品から環境触媒へアップサイクルするプロセスのビジョン

なお、同研究はNEDOが実施する「官民による若手研究者発掘支援事業」における、共同研究フェーズに採択されている。

同研究の成果の一例として、酸化亜鉛を触媒化する基礎技術を開発した。酸化亜鉛を含む日やけ止めに触媒の材料となる白金化合物を加え、LED光を照射することで、日やけ止め中の酸化亜鉛を触媒化することに成功した。この触媒は通常の方法で生成した触媒と比べても遜色ないレベルで有害ガスである一酸化炭素を分解できることを確認した(図3)。

図3:日やけ止め由来の触媒の合成とその反応性評価

今後も同研究を推進し、実際に使われなくなった日やけ止めなどの化粧品から触媒を生成するプロセスの実証実験を目指す。同社はこれからも化粧品研究を通して循環型社会に貢献する技術開発を続けていくとしている。