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一人の研究者が風穴を開けた

コーセーが化粧品の世界にデータサイエンスを持ち込み、研究開発のあり方に一石を投じている。データサイエンスとは、大量の情報(データ)を集めて、AI(人工知能)などのツールを用いて有益な情報を抽出した後、目に見えない共通項を発見し、課題解決する学問だ。化粧品研究に応用すると、例えば、老化(y)に影響を与える三つの因子(x1, x2, x3)があるとして、これまでの老化予防はx1へのアプローチに終始していたが、x2とx3にも同時に働きかけることで、より効果的に対応できるようになる。「膨大なデータから、例えば『y=x1+x2+x3』という数式を見いだすのが、データサイエンスの役割であり、醍醐味。『=』の右辺、つまりすべてのxが分かればyは変えられる。未来を変える手段が分かる、ということです」とコーセー研究所先端技術研究室グループマネージャー兼データサイエンスグループ主任研究員の中村理恵さんは説明する。

コーセー研究所
先端技術研究室グループマネージャー兼データサイエンスグループ主任研究員
中村理恵さん

コーセーのデータサイエンスは、2015年に芽吹いた小さな取り組みが始まりだった。大学で薬学を学びつつも、数学が大好きだった05年入社の中村さんは、化粧品の価値の解明に興味を持った。スキンケアには肌改善効果はもちろん、ストレス軽減や気持ちを前向きにする力など多種多様なメリットが期待されるが、それを科学的に立証するのは難しい。「皮膚科学の研究を担当していた頃、化粧品の使用者が感じている効果や納得感に対し、科学的根拠を適切に示すことができていない、というもどかしさがありました。感じている価値が、数値やデータとして十分なエビデンスになっていないのではないか。でも、だからこそ、化粧品の効果や価値を、データや根拠の観点からもっと丁寧に深掘りすれば、嗜好品の枠を飛び出し、化粧品は生活インフラにすらなるのではないか。そんな想いが、私のデータサイエンスへの出発点でした」と中村さんは振り返る。

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