資生堂は、マスカラにおける長年の技術的課題であった「優れたカールキープ力」と「お湯で簡単にオフできる性能」の両立を実現する革新技術「WASHABLE LOCK TECHNOLOGY™/ウォッシャブルロック テクノロジー™」を開発した(図1)。

図1:カールキープと簡単オフの両立を実現

フィルム(皮膜剤)に着目したこの技術により、「お湯と油の両方になじむ新しいフィルム」と、同フィルムが、「油性製剤でありながらフィルムが有するお湯オフ機能を発揮する最適な処方」を構築することに成功、ウォータープルーフでありながらお湯ですっきり落ちるという、マスカラの常識を覆す技術革新を生み出した。

同技術は、2026年2月発売予定の「マジョリカ マジョルカ ラッシュエキスパンダー ネオラッシュ」および、「エテュセ マスカラ エクストラ ロング」への搭載を予定している。

まつ毛のカールが1日中美しく持続し、かつ、お湯だけで負担なくオフできる。この一見シンプルなニーズの実現は、化粧品技術において極めて困難な挑戦だった。従来のウォータープルーフタイプは、強固な油性皮膜によりカール持続性に優れる一方で、オフ時にはオイルクレンジング剤や専用リムーバーを必要としていた。対照的に、お湯落ちフィルムタイプは水溶性の特性により簡単にオフできるものの、その親水性ゆえに水性基剤で処方を構築する必要があり、カール持続力に限界があった。今後さらなるマスカラ技術の進歩を求めるためには、この背反関係にある性質を融合する新しいフィルムの開発が必須であるとの考えのもと、アプローチを進めた。油に分散する性質とお湯で落とせる性質を併せ持つ新しいフィルムを目指し、ポリマー(重合体)を構成するモノマー(単量体)の異なる機能をふまえ、ポリマーを独自設計することで、カールキープ力・ウォータープルーフ性・お湯で簡単に落とせる機能を同時に備えたカールフィルムを見いだした。またこのカールフィルムをウォータープルーフタイプに配合し、最大限機能を発揮できる処方を工夫し、理想とするマスカラ製剤の開発を進めた。

今回のアプローチにより、開発したこの革新的な独自の「カールフィルム」は、従来不可能とされていた相反する二つの機能を統合している。一つは、「形状保持プロテクター機能」で、皮脂や湿気といった外的要因に対し卓越した耐性を示し、カール形状を長時間維持する。もう一つは、「お湯センサー機能」で、お湯との接触によりフィルムを膨潤させ、フィルム構造を効率的に柔らかくしてお湯オフを可能にする(図2)。

図2:WASHABLE LOCK TECHNOLOGY™の機能

新フィルムは、異なる機能を持つモノマーを選定し、その構成割合などの検討を重ね、特定のポリマー成分(ポリアクリレート-51)を開発するに至った。

加えてこのポリマー成分は Non Aqueous Dispersion(NAD:非水系ポリマー分散体)という分散技術を用い油性製剤に分散する方式を採用している。これらにより「カールキープ力につながるフィルム乾燥時の適切な膜硬度」と「簡単オフにつながる、お湯に対する親和性」という、従来は両立が難しかった物性を同一ポリマー分子内で実現した。さらに他成分との配合バランスを精緻に調整し、最適な処方にたどり着き、「WASHABLE LOCK TECHNOLOGY™」が誕生した。

カールを施した評価用毛髪モデルに、同技術を搭載したマスカラ製剤の塗布実験を行った結果、従来のウォータープルーフタイプ(油性タイプ)のマスカラと同等の優れたカールキープ力を長時間持続していることを確認した(図3)。

図3:マスカラ基剤別によるカールキープ効果の検討

また、カールフィルムのお湯オフ効果の検証(※1)においては、これまでのお湯落ちフィルムタイプと同様にお湯に触れると、塗布膜全体が膨潤し軟化することで、軽くこするだけで自然に剥がれ落ちる(図4)。

図4:皮膜剤のお湯オフ効果の評価

同技術で確立された「持続性と除去性の両立」という設計思想は、マスカラの枠を超えた応用可能性を有している。アイメイク製品全般、さらにはサンケアやベースメイクカテゴリーにおいても、同様の技術的課題の解決に寄与することが期待される。

※1:着色した皮膜剤をガラス面に塗布し乾燥させフィルム化した後、お湯や水に一定時間浸漬させスパチュラで擦った状態