10月中旬、上海開催のフレグランス展示会「Notes Shanghai」に足を運んだ。約300ブランドが出展し、そのうち40%が中国ブランドだった。世界観やボトルデザインに中国っぽさはなく、欧米ブランドと遜色がない。香りは上海の竹を使ったりと少し地元感があるが、芳醇な香りは心地よかった。「to Define」は数年前に生まれた新興の中国ブランド。しかし、年商はすでに1000万元超。日本円で2億円である。ドイツ、フランス、イタリアなどのブランドに話を聞くと、中国は欧米に次ぐ有望市場だという。10代、20代の若者が香水を使い始めているからだ。おそらく20代後半の「to Define」の担当者は、どうして急成長できたのか、という私の問いに回答した後、「経済が不況とか言い訳しても仕方がない。頑張って勝ち続けないと私たちは生活できない。そういう競争社会にいるから」と話してくれた。ビジネスへの覚悟と執着心は並みではない。「ワークライフバランスを捨てる」という高市早苗新首相の一言を話題にする日本人は、ビジネスに勝てるだろうか。我が家の3歳児は、自分でトミカを隠して、自分で探すオリジナルの遊び「ブーブーかくれんぼ」を考案。妻を巻き込みながらエンドレスで楽しんでいるから、執着心は十分。遊びを生み出す柔軟な発想力を生かして競争に勝ち抜いて、と展示会の休憩室で思いを馳せた。

月刊『国際商業』2025年12月号掲載