秋風が吹き始めた。暑さに弱い私は、ようやく一息ついている。9月9日息子が3歳になった。残念ながら誕生日当日は上海におり、一緒に祝うことができなかった。罪滅ぼしを兼ねて、小売店をはしごして息子が望むトミカを探した。知識がないので素直に驚いたのは、中国のバスやトラック、香港のタクシーなど、日本で見かけない商品が多数あったことだ。いずれもトミカらしい精巧なつくりで、息子に頼まれていないのに、思わず手を伸ばしてしまった。上海の景気は底打ち感が少し出ている。現地の企業も機関投資家も来年こそ勝負できる、と期待を膨らませている。しかし上海人は商品の選択眼が厳しくなっている。景気が上向いたからといって、何でも買うとは思えない。それだけ街と生活者は成熟している。他の一級都市も同じではないか。トミカと同様、ブランド価値と商品の質が強く問われる。各プラットフォームはブランドからお金を巻き上げ、KOLを優遇すると、商品のイノベーションが進まないことにようやく気が付いたらしい。ブランドへの利益還元を強化する動きが出始めたことに少し安堵した。中国政府はプラットフォー厶による高圧的な価格交渉を禁じる動きを見せている。実現すればブランドにとって追い風だ。日本政府も化粧品の輸出促進に強い興味を持ち始めた。アジア、ASEAN、欧米と世界中で存在感を出すK-Beautyを追いかけ、追い抜くことに、業界を上げて取り組む環境が整うことを期待したい。

月刊『国際商業』2025年11月号掲載