円安が続いている。実質実効為替レートを見ると、1ドル=360円の固定相場制だった時代と同水準。それは1970年代のことで、いつの間にか日本円はトルコリラに次ぐ弱い通貨と語られるようになった。日本は化粧品大国だ。国内市場規模は米国、中国に次ぐ世界3位。特にスキンケアは、安全性を高く評価され、中国人を中心に絶大の支持を得たのは記憶に新しい。なのに、だ。安全性の基準について、いつの間にか日本はガラパゴス状態に陥っている。中国、ASEANともにEU規制をベースにしており、もはや日本の基準に覆す余地はない。昨今は米国もEU寄りに方針を転換しているそうで、ますます日本の肩身は狭くなる。中小化粧品メーカー社長は、5年後にEUが定めた香料アレルゲンが日本に導入されると聞いて「うちは日本以外では販売しないのに、EUの基準に合わせなければいけないのはなぜだろうか」と嘆く。日本の化粧品産業の発展を支える基準を諸外国に広めていれば、今よりも遥かにブランドの海外展開は容易だったのではないか。遅きに失したと言わざるを得ないが、挽回の機会を探りたいと思う。

月刊『国際商業』2024年04月号掲載