ロート製薬は、ロートグループ総合経営ビジョン2030である「Connect for Well being」の実現に向け、若い女性特有の香り成分である「ラクトン」(女性の体臭に含まれ年齢と共に減少する甘い香りの成分、γ-ウンデカラクトン)の研究を進めている。今回、ラクトンの前駆体である4-ヒドロキシウンデカン酸ナトリウム(以下、プレラクトン。「プレラクトン」はロート製薬の登録商標)が、甘い香り成分「ラクトン」に変化する際に酸っぱい・ツンとした「不快臭」の一部を低減する働きを持つことを明らかにした。同研究は2025年9月8~10日に大阪府・豊中市にて開催の日本味と匂学会第59回大会で発表した。

近年、身だしなみに対する意識の高まりから体臭対策のニーズが増大し、さまざまな製品が使用されている。さらに、自身の「体臭」に悩みを持っている女性が一定数いることが分かっており(20~60代女性へのニオイ意識に関する調査「体臭」について悩みを持っている人の割合48.3%〈N=1万、ロート製薬調べ〉)、女性のニオイ悩みに寄り添う研究が求められている。

同社のこれまでの体臭研究では、女性の体臭に含まれる甘い香りを放つ成分「ラクトン」が年齢と共に減少していることを発見し、女性の年齢による体臭変化にはラクトンが関わっていることを明らかにした。さらに、ラクトンの前駆体で無臭の物質、「プレラクトン」が人の肌の上でラクトンに変化することを発見し、ラクトンとプレラクトンを組み合わせることでラクトンの香りが長時間持続することを明らかにしてきた。

図1:プレラクトンがラクトンへ変化するイメージ図

しかし、ラクトンの「香り」を補うだけでは根本的なニオイ悩みの解決策とはならない。そこで今回、単に「香り」を補うだけではなく、ニオイ悩みにつながる酸っぱい・ツンとした「不快臭」に着目し、化学的に低減する新技術の探索を行った。

結果1:悪臭成分の酸にプレラクトンを添加すると各酸の量が減少することを発見

不快な皮脂や汗のニオイに起因する4種の酸(酢酸、イソ吉草酸、イソ酪酸、4-メチル-3-ヘキセン酸)を悪臭成分として選定し、プレラクトンを添加したところ、コントロール(水)を添加したものと比較して、各酸の濃度が低下することが確認された。(図2)

図2:悪臭成分の酸にプレラクトンを加えたときの酸濃度

結果2:悪臭成分の酸にプレラクトンを添加するとラクトンが発生することを確認

悪臭成分の酸の混合物(酢酸、イソ吉草酸、イソ酪酸、4-メチル-3-ヘキセン酸)にプレラクトンを添加したところ、コントロール(水)を添加したものと比較して、ラクトンの量が優位に増加することが確認された。(図3)

図3:悪臭成分の酸にプレラクトンを加えたときのラクトン量

結果3:プレラクトンによって悪臭成分の不快度が減少することを官能評価にて確認

綿球に悪臭成分の酸を添加したものと悪臭成分+プレラクトンの混合物を添加したものを用いて9段階快・不快度表示法を行ったところ、悪臭成分とプレラクトンの混合物では優位に不快度が減少することが確認された。(図4)

図4:9段階快・不快度表示法による官能評価の結果

同研究により、プレラクトンは人の肌の上で女性の体臭に含まれる甘い香りのラクトンに変化するだけではなく、酢酸、イソ吉草酸、イソ酪酸、4-メチル-3-ヘキセン酸といった悪臭成分の酸を減少させることでニオイ悩みにつながる酸っぱい・ツンとした不快臭の一部を低減すると考えられる。これにより、制汗や殺菌作用のようなニオイの元を抑制する方法や、香料のマスキング効果で不快なニオイを快適な香りに変える方法に加えて、不快臭を低減させながらラクトンを補うという、新たなニオイ悩みに対するアプローチの可能性が示唆された。

同社は今後もラクトンの新しい機能の探求を続け、新しい価値の提案を行う。さらに、従来の発生したニオイに対するアプローチだけではなくニオイが気にならない体づくりなど、既存の枠を超えて新しい技術を提供できるよう、お客の悩みを根本的に解決するための研究開発を続けていくとしている。