NCC若手経営者の会が9月4日と5日に第37回全体会議を行った。NCCは50歳定年制を敷く。今回で卒会するのは藤原隆志氏(シャン)、内山卓氏(御宿ウチヤマ)、山田直史氏(甲州屋)、藤川正英氏(フジカワ)、広瀬史貴氏(ヒロセヤ)など14人で、全体会議の1日目の最後にセレモニーを行った。会長を退き顧問に就く高瀬直樹氏(星の国)は卒会メンバーと現執行部との思い出を振り返り、言葉に詰まった。それだけNCCが努力を重ねて出した成果に手応えと達成感があったのだろう。

高瀬会長は24年、25年の2年間、理念経営に取り組んだ。NCCのミッションは化粧品専門店の地位向上。実現に向け、NCCから大勢のトップ経営者が巣立ち、化粧品業界を変える原動力を生むことを目指している。その一環として力を入れた理念経営は、商品、価格、店舗設計、販売手法、人材育成など、経営者の考えを企業活動の隅々に浸透させる経営手法を指す。NCCは会員各社が自ら理念に向き合い、戦略に落とし込み、戦術を考え実行することをやり抜いた。理論分析、成功体験の共有、再来店要因の分析など、会員同士の状況を見える化し、議論を交わしたことは、化粧品専門店の経営者として大きな財産になったに違いない。卒会する藤原氏、内山氏山田氏による「NCCを通じて学んだこと」をテーマにしたトークセッションでも、年齢や地域などの違いを気にすることなく、胸襟を開いて議論できるNCCの価値は尊く受け継ぐべきだ、とNCCの未来を後輩に託していた。

NCC会長のバトンは、田中隆介氏(とらや)が受け取った。新会長の方針として「化粧品専門店として地域で目指す姿とは〜会員各々の強みを活かして〜」を公表。「これまで学んできた理念経営を現場に浸透させ、人の力を底上げし、地域で必要とされる企業、地域で勝ち残る専門店に近づける2年間とする」と宣言した。

新会長の田中隆介氏(とらや)

NCCは即効性のある戦略、戦術を行う場ではない。足元の数字を追う自店の経営とは一線を画し、長期視点で業界と社会を俯瞰したテーマを設定し、座学と実践を交えて学べる貴重な場である。田中氏は化粧品専門店のビジネスモデルに生成AIを活用することに強い興味を持っている。最新技術を使って効率的に価値を生み、経営基盤を強固にできるか。それは化粧品専門店チャネル共通の課題でもあるから、NCCには業界全体を巻き込むリーダーシップも期待したい。


NCCは化粧品専門店業界を変える力を持つことが問われている

月刊『国際商業』2025年11月号掲載