資生堂は2025年9月12日、手話接客スタッフの活躍の場づくりに向けたキャリア交流会を開催した。同社は手話人材の活躍を支援し、企業間のネットワークを構築することで聴覚障がい者がより自分らしく働ける社会の実現を目指している。企業間でのネットワーク構築や情報共有の場が不足している現状を受け、企業や職種を越えた手話人材のつながりを創出する場を企画。スターバックス コーヒー ジャパンとソフトバンクグループが賛同し、参加した。
交流会の目的は、手話人材が企業や職種を越えてつながりを持ち、キャリア形成や職域拡大を目指すこと。第1部は、参加企業による取り組み紹介や実演、参加者同士の意見交換を通じて、手話人材が輝くための新たな可能性を探った。例えば、資生堂は聴覚に障がいのあるお客向けのオンライン美容相談サービス(無料)を実演。メリットは三つあり、最適なコミュニケーションスタイルでカウンセリングを提供できること、好きな場所でオンラインカウンセリングを受けられること、視覚情報を多めに取り入れ分かりやすい内容にできることである。資生堂は顧客サービスとして重要であるとともに、障がいのある人材が活躍できる職域を広げていることを紹介した。今年は聴覚に障がいを持つ人材を2人採用しており、資生堂は化粧品業界の障がい者雇用の可能性を示している。
業界の垣根を越えた交流は珍しい試みだという。資生堂は社会価値創出に向けリーダーシップを発揮している
スターバックス コーヒー ジャパンは、手話が共通言語となる国内初のスターバックス サイニングストア「nonowa国立店」の取り組みを紹介。聴覚障がい者が手話を交えて注文するケースと聴覚障がいを持つスタッフが健常者から注文を取るケースを実演した。ソフトバンクグループは手話カウンターについて発表。月間来客数は渋谷店が300人、名古屋店が200人。例えば渋谷店では手話・筆談対応が月300人、スマホ教室が月16人、出張サポートが月3人、遠隔手話サポートが月5人、メール・FAX対応が月360件で、非常に需要が多い。これを示したうえで、来店客にスマホを紹介するシーンを実演した。
第2部は現状共有と交流会で得たヒントやこれから目指したいことをテーマに、参加者同士によるディスカッションが行われた。手話を使って接客をする参加者が業種を越えてオンラインあるいは店舗での知見を共有し、今後の活動のヒントを得る有意義な時間となったという。★
月刊『国際商業』2025年11月号掲載