伊勢半ホールディングスは、2025年に創業200周年を迎えるにあたり、記念企業史展「愛せよコスメ! リターンズ―おかげさまで200周年―」を開催中だ。会場は紅ミュージアム(東京都港区南青山)で、会期は6月25日から9月28日まで。主催は紅ミュージアムで、協力は伊勢半、エリザベス、マーシュ・フィールドの各社が務める。この開催に先立ち、6月23日にはメディア内覧会が開催された。

1825年に紅屋として創業した伊勢半は、時代の変化に合わせて紅から総合化粧品メーカーへと発展し、戦後に誕生した「キスミー」ブランドを軸に「ヒロインメイク」「ヘビーローテーション」など現代の製品群に展開してきた。今回の展示では、こうした200年の歩みを約570点の資料で紹介する。

目玉のひとつとして、歴代口紅から選定した286本を使った「口紅ツリー」が登場。戦後の女性に支持され「口紅のキスミー」と称された歴史を象徴的に表現する。このほか、85年の「本紅製造問屋組合設立願」や、創業前ブランド「艶蝶」の小町紅・棒紅など、近代化の過程を示す貴重な史料を展示。さらに「キスミー」ブランドの命名背景や昭和以降に展開されたファンデーション、香水、日焼け止め、男性用化粧品、まぶた商材などの製品群も年代順に展示・解説した。

ブランドだけでなく、紅屋から化粧品メーカーへの転換を推し進めた六代目・澤田亀之助の功績も紹介。東京大空襲後、焼け残った原料を活用して製造を再開したエピソードや、独自の広告戦略を示すノートやラジオCM台本などが展示され、戦後復興とともに歩んだ企業史が明らかとなっている。

また、戦後から1960年代にかけて「口紅のキスミー」をブランド化するため展開された新聞・雑誌・ラジオ・テレビなどの広告、多媒体にわたる宣伝展開や文化放送の人気ラジオ番組「素人ジャズのど自慢」へのスポンサー参加、サンプル配布やスピードくじによる販促キャンペーンの資料も並び、貴重な音声や映像資料までまとめられている。


貴重な資料も多数展示され、さまざまな角度から伊勢半の歴史を振り返ることができる

さらに60年代に導入されたセルフ販売システム「PSP(パーフェクト・セルフ・パッケージ)」も紹介され、当時のディスプレイ台を再現展示。来場者にはミニコスメのプレゼント(1人1点)も用意され、セルフメイク文化の黎明期を感じることができる内容だ。

紅ミュージアムは伊勢半が運営する紅と化粧文化の資料館で、常設展示は無料。今回の展示は、200年の軌跡を凝縮し、「キスミー」ブランドをはじめ、数多くのブランドともに発展してきた伊勢半の歩みを振り返る内容となっている。

月刊『国際商業』2025年09月号掲載