タカラベルモントの化粧品研究開発部は、毛髪内部構造を可視化する同社独自のイメージング技術を進化させることで、クセ毛の本質に迫る新たな事実を解明した。なお、同技術を用いた研究成果について、2024年11月18~20日に兵庫県神戸市の神戸国際会議場で開催された「第2回日本化粧品技術者会 学術大会」にて口頭発表を行った。発表タイトルは、「免疫組織科学と類似度比較を用いることによる毛髪中のケラチンプロファイリング」。
同研究の要点は三つ。
①同社独自の蛍光イメージング技術により、毛髪内部に存在する12種類のケラチンの分布パターンを可視化
②画像検索などにも用いられる類似度比較を応用することで、左右分布の偏りを数値化
③3種類のケラチンにおいて、クセ毛では左右分布に偏りがあることが判明
「なぜ髪の毛は、まっすぐなものと、うねるものがあるのか?」という多くの人が一度は抱いたことがあるであろうこの疑問に関して、同研究では毛髪内部に存在する特定のケラチンの分布パターンとクセ・直毛の違いに関係性があることを新たに見いだした。毛髪を構成する主成分「ケラチン」には多くの種類が存在しており、これらに関してクセ毛と直毛では一部の種類のケラチンで含有量に違いがあることが報告されてきた一方で、それらの空間的な分布の違いについては明らかになっていなかった。そこで同研究は、自社独自の蛍光イメージング技術をさらに進化させ、毛髪の大半を占める内部領域「コルテックス」において12種類のケラチンの分布を高解像度で可視化することに成功した(図1)。

図1:毛髪の横切片を作成し、12種類のケラチン分布パターンを赤色の蛍光色素で可視化
その結果、特にKRT35、KRT38、KRT85の3種類のケラチンにおいて、クセ毛と直毛で左右の分布に明確な偏りがあることを発見。クセ毛では左右のケラチンバランスが崩れており、それが毛のうねりにつながる可能性が示唆された(図2-1)。また、この発見を数値的に解析するために、「本来は画像の類似性を測るユークリッド距離を、あえてどれだけ異なるかを示す指標として利用する」という新しいアプローチを導入。毛髪の横断面を長径方向に2分割し、左右の類似度を比較することでクセ毛の特徴的なケラチン分布のズレを数値化して比較することが可能になった(図2-2)。

図2-1: クセ毛と直毛における3種類のケラチン分布パターンの違い

図2-2: 3種類のケラチンにおける左右分布パターンの偏りを比較
同研究成果について、化粧品研究開発部 基礎研究センター 基礎研究担当スペシャリスト 萬成 哲也研究員は、「これらの成果は、将来的にクセ毛のメカニズムを根本から解明し、髪の毛が生える段階から髪質をコントロールする新技術へとつながる可能性があると考えます。また、今回進化した蛍光イメージング技術はケラチンに限らず、さまざまな毛髪成分の可視化を可能にするものであり、美容・健康分野における新たな応用も期待できます。弊社は今後も、毛髪科学の最前線で新たな可能性を探求し、髪の本質に迫る研究を続けてまいります」とコメントしている。

萬成哲也研究員