ポーラ・オルビスグループの研究・開発・生産を担うポーラ化成工業は、化粧品を自分の肌に塗った際(セルフタッチ)の脳反応を測定する研究を行い、スキンケア製品の新たな可能性を見いだした。その内容は、「自分の肌に塗って心地よいと感じる(弾性が高い)スキンケア製品は、魅力に関わる脳部位の前部前頭前皮質(aPFC:anterior prefrontal cortex)を活性化し、顔や風景を見たときの魅力印象を高める」というものだ。

化粧品において、弾性は使い心地に関連する物性の一つで「肌上に塗った際に感じるハリや弾力感」に関連する。同研究により、触覚を通じて感じる化粧品の使い心地が脳の特定部位を活性化し、触覚以外の感覚で感じる印象にも影響し得ることが明らかになった。これは、五感で感じる全ての日常体験をより魅力的に感じさせるという、「化粧品の新たな可能性」にもつながる知見である。

同社は過去の研究から、aPFCが「魅力認知の要」であり、この部位が活性化すると視覚や触覚などいろいろな感覚(五感)で魅力を感じやすくなる可能性を示している。この知見から、普段の生活で使用するものでaPFCを活性化できれば、日常生活がより豊かになるのではと考えた。そこで着目したものが、毎日の肌の手入れに欠かせないスキンケア製品だ。aPFCは心地よいと感じた時に活性化することが知られている。また、自分の肌に塗って心地よいと感じるスキンケア製品は弾性が高いことが分かっている。そこで、弾性が高いスキンケア製品を自分の肌に塗った際の脳反応について検証した。スキンケア製品の物性(弾性)が魅力認知に与える影響を明らかにするために、磁気共鳴機能画像法(functional magnetic resonance imaging,fMRI)を用いた検証を行った。2種類(弾性が高い/低い)のスキンケア製品をセルフタッチしている最中の脳反応の差から、aPFCを含む脳部位の活性化を解析した。すると、aPFCを活性化する効果があることが分かった(図1)。

では、触覚でaPFCが活性化すると他の感覚での魅力の印象も実際に変化するのだろうか。そこで、弾性の高いスキンケア製品を自分の肌に塗り、aPFCが活性化した時に、視覚から感じる魅力印象が高まるのか検証した。検証には2種類(弾性が高い/低い)のスキンケア製品を用い、被験者に自身でスキンケア製品を塗ってもらった後に、ディスプレイ上に表示された顔画像または風景画像を見て魅力印象を評価してもらった。弾性の異なるスキンケア製品を塗った時に、魅力印象に差が出るかを解析し、弾性が魅力認知に影響するかを確認した。結果、顔画像と風景画像に対する魅力印象が高まることを見いだした(図2)。

今回の結果は、スキンケア製品の感触や使い心地といった触覚の感覚体験により、他の感覚で感じる魅力印象を高められる可能性を示している。同社は弾性の高さをコントロールしたスキンケア製品を使ってもらうことで、aPFCを活性化し「五感で感じる全ての日常体験をより魅力的に彩ることができる」と考えている。なお、同研究の一部は、2024年10月14~17日に開催された第34回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)世界大会で発表された。