資生堂は2025年5月19日、新橋演舞場開場100年の節目に「舞」をモチーフとした新しい緞帳を寄贈した。
資生堂と新橋演舞場の歴史は古く、明治時代にさかのぼる。1902年(明治35年)、資生堂薬局内にソーダ水や当時まだ珍しかったアイスクリームを製造販売する日本で初めてのソーダファウンテンを設けた(現:資生堂パーラー)。当時の顧客の中心は、新橋の芸者衆で、三味線のお稽古の行き来の合間にソーダ水でひと息つく芸者衆のために三味線置き場を作ったエピソードなども残っている。新橋演舞場はその芸者衆が芸を発表する「東をどり」の場として1925年(大正14年)に誕生した。
資生堂は、現在の新橋演舞場の建て替え時(1982年)に緞帳を寄贈し、93年にも緞帳「光彩」を寄贈している。今回は32年ぶりの寄贈になる。
新橋演舞場は、劇場ができるきっかけとなった演目「東をどり」のほか、歌舞伎、ミュージカル、新派、松竹新喜劇、喜劇、シアターコンサートなど、毎月多岐にわたる演目が上演され、幅広い層のお客が来場する。資生堂は、こうした多種多様な演目になじみ、観劇の高揚感を高めるデザインの緞帳を寄贈してきた。
新しい緞帳デザインは「舞」をモチーフにしている。資生堂クリエイティブのクリエイターがコンペを実施。約20作品の中から選ばれた。今回のクリエイションには最新技術を用いている。尾上流四代家元の尾上菊之丞が振付した「舞」を歌舞伎俳優の中村隼人が実演し、その軌跡をモーションキャプチャーという特別な方法で記録。そのデータを用いてデザインを制作した。
新橋演舞場において歴史的にも意味のある「東をどり」を始めとする、歌舞伎やさまざまな演目をインスピレーションの基に、人間のリアルな動きと最新のテクノロジーの融合から生まれた新しいデザインになっている。「伝統を重んじながら、美しいものを大胆につくる。この資生堂らしさを出そうと意識した」と佐野りりこアートディレクターは説明する。
資生堂が寄贈した新しい緞帳は、25年5月21日から開催の「第100回東をどり」でお披露目した。★
題名:舞
デザイナー:資生堂クリエイティブ 佐野りりこ アートディレクター
製織:川島織物セルコン
寸法:間口23m×天地8m50㎝
月刊『国際商業』2025年07月号掲載