ディーエイチシー(以下:DHC)は、フラボノイドの一つである「ラムナジン」によるシミ抑制に関する新しいメカニズムを解明した。同研究は、2024年11月27日から29日に福岡で開催された第47回日本分子生物学会年会にて、『メラノソームの輸送阻害効果を示すフラボノイド類の探索とその分子機構の解析』のタイトルで発表した。

同研究でDHCは、美白成分の新たな作用機序として「メラノソームの輸送阻害」に着目した。従来の美白剤は主に、シミの原因となるメラニン合成酵素である「チロシナーゼ」の働きを阻害するものだったが、同社の研究ではフラボノイド「ラムナジン」がメラノソームの輸送機構に影響を与えることを解明した。

メラノソームはRAB27A、ミオシンVA、メラノフィリンという三つの輸送関連タンパク質の複合体によって細胞内輸送されることが先行研究で報告されている。輸送阻害を起こしたメラノサイトでは、細胞核の周りにメラノソームが凝集する。成分探索の結果、複数のフラボノイド化合物を見出し、その中の「ラムナジン」によるメラノソーム輸送の阻害機構について詳細を研究した。

メラノソームの輸送とその装置の模式図

メラノソームの輸送阻害を起こした細胞

ラムナジンによるメラノソームの輸送阻害の要因を探る為、これらのタンパク質の発現を調べたところ、メラノフィリンのみが顕著に減少することが分かった。さらに詳細を調べると、メラノフィリンは、ラムナジンを添加することでタンパク質分解の目印であるユビキチン(タンパク質の分解に関与している76個のアミノ酸で構成されるタンパク質)化が進んでいた。

このことから、ラムナジンはメラノフィリンのユビキチン化を誘発し、プロテアソーム(細胞内で不要となったタンパク質を分解する為の巨大な酵素複合体)と呼ばれる装置によってメラノフィリンの分解が促進されることで輸送に関わる3者複合体が解除され、結果としてメラノソームの輸送阻害が起きていることが示唆された。

(A)輸送装置タンパク質への影響 (B)ユビキチン化の状態 (C)ラムナジンによるメラノフィリンの分解機構

メラノソームの輸送をコントロールできれば、過剰なメラニンが表皮角化細胞に取り込まれることを防げると考えられる。今回の研究結果を活かし、ラムナジンを活用した化粧品に配合可能な植物エキスの開発を進めていく予定。このエキスを既存の美白剤と併用することにより、さらなる効果を実感できる美白化粧品の開発が期待できる。

色素沈着抑制効果への期待

同研究は、国際学術誌に掲載済[JDermatolSci.2022Jan;105(1):45-54]かつ特許取得済(登録番号:7470270)の内容だ。