韓国コスメに関して聞かれることが増えた。今さら売れ行きではない。アジアだけでなく、米国でも存在感を高める韓国コスメに対抗する手段として、国の支援を求める声が強い。霞が関からも問い合わせが来る。どう支援するべきだと思うか、と。だが、総じて思うのは、日本の化粧品業界関係者は韓国現地の実態をあまり知らないということだ。韓国政府が支援するのは韓流文化の発信に尽きる。エンタメや食などと同じく、化粧品はツールに過ぎない。旬が過ぎれば、次の流行りに投資を振り向ける。確かに、韓国政府の支援を受けて世界中の展示会に出る化粧品ブランドは多い。だが、数年後、そのブランドは存在しているだろうか。消えては生まれるファブレスメーカーの存在は、韓国の既存化粧品メーカーの経営を圧迫する。研究所を構え、生産技術を磨き、一時的ではない雇用を生む企業の国内事業に悪影響を与えるやり方まで、日本は韓国から輸入すべきだろうか。私も韓国の全てを知るわけではないが、現地に足を運び目で見て、耳で聞いて、肌で感じるようにしている。失敗談も多いが、学びを得ることの方が遥かに多い。スキンケアに強い東アジアの化粧文化が世界に波及するメリットはある。その中心を担う日韓の競争について、もう少し冷静な議論をすべきだが、旗振り役が不在。化粧品業界の議論が深まらない要因は、ここにある。

月刊『国際商業』2024年11月号掲載