米国MLBドジャース所属の大谷翔平選手の経済効果はすさまじい。2024年5月9日、大谷選手がインスタグラムのストーリーに、チームカラーを彷彿とさせる淡い青色の鉄瓶を投稿した。すると、製造元の南部鉄器工房「及富」に世界中から注文が殺到。瞬く間に在庫はなくなり、商品は1年待ちの状態になったという。「及富」は岩手県奥州市にあり、大谷選手は地元の活性化に貢献したことになる。この鉄瓶をプレゼントしたのは、コーセーの小林一俊社長である。5月23日に開いた化粧品専門店経営者向けの戦略発表会「絆の会」で、米国のドジャース本拠地に足を運び、結婚祝いに鉄瓶と夫婦湯飲みをプレゼントした、と明かした。同会に出席した経営者は「インスタグラムの投稿に『ありがとうございます』という感謝のメッセージが添えられていたことが嬉しかった、と照れくさそうに話していた」と言う。大谷選手の言動は世界を駆け巡る。いっそのこと、日本の化粧品の魅力をもっと発信してくれれば、回復が遅れ気味のインバウンドの追い風になるのに――とぼんやり思いながら、5月25日、粧苑すきや(宮城県)の話題の新店に足を運んだ。「良い立地に店を構えて、売れる商品を置く。これが小売業のマネジメントだろう」という由佐(幸継)社長の一言で目が覚めた。他力を頼らず、努力を惜しまず、知恵を絞ろう。やる気スイッチが入るぐらい、粧苑すきやの新店は唯一無二の見事な仕上がりだった。
月刊『国際商業』2024年07月号掲載