盛り上がる市場に鈍化の兆し
2023年の国内化粧品市場は元気になる。これがメーカー各社共通の見立てだ。理由は3月13日にマスク着用の判断が個人に委ねられ、5月8日にコロナの分類がインフル並みの5類になることである。人々の行動が活発になれば、外見をひき立てる化粧品の需要は回復するだろう。だが、そもそもコロナは一過性の事象に過ぎない。国内市場最大の難題は、確実に進む人口減による市場縮小である。海外に市場を求めることもあるが、国内での解決策は一人当たりの単価を上げること、化粧人口を増やすことが主な取り組みになる。日本の化粧品市場は低価格帯と高価格帯に加えて、中価格帯がある世界でも稀な市場を構成している。価格帯別にブランドが豊富に存在し、すでに単価アップの競争は激しい。単価アップ、化粧人口増を図るには、コロナを機に盛り上がるメンズ需要の掘り起こしは欠かせない。女性の化粧品使用率はほぼ100%だから、化粧に興味を持つ男性は市場活性化の切り札になる。
メンズの化粧需要の顕在化は、予期せぬパンデミックが生活者に人生を見直す機会を与えたことにより加速した。一寸先は闇を実感したからこそ、今を最大限に生きる価値観が広がり、それが消費の多様化を促している。ウェブ会議の普及で自分の顔を見る機会が増え、シミ、そばかす、シワなどのエイジングサインを気にする男性が多くなったのも、人生の価値を意識したことと無縁ではない。年代を問わず、他者からの見え方を意識するトレンドが生まれ、男性が美容を語ることへの違和感は徐々に薄れた。化粧品売り場に足を運ぶ男性客が明らかに増えている。
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